2020 Fiscal Year Annual Research Report
プロトントンネル:新たな量子拡散効果の実証と学理構築
Project/Area Number |
19K22064
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
山崎 仁丈 九州大学, 稲盛フロンティア研究センター, 教授 (30292246)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | プロトン伝導性酸化物 / プロトン拡散 / 量子効果 / 低温物性 / アレニウスプロットの折れ曲がり |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、金属酸化物中におけるプロトン量子トンネル拡散現象を世界で初めて実証し、新たな学問体系の構築に端緒をつけることである。金属酸化物中のプロトンは、室温以上においてアクセプタードーパントにトラップされており、熱エネルギーを利用しトラップから逃れることで長距離拡散するが(Yamazaki et al., Nature Mater. 2013)、0 Kではポテンシャル障壁を通り抜けるトンネル効果が計算で示唆されている。しかし、実験的に実証するには至っていない。本研究では、中温度域におけるプロトン伝導度が世界最高と知られているアクセプター置換ジルコン酸バリウムを対象に、極低温におけるプロトン伝導度やプロトン拡散係数の温度依存性を決定し、その活性化エネルギーや同位元素効果、トンネル確率を根拠としてプロトン量子トンネル拡散現象を世界に先駆けて実証することを目的としている。室温(300 K)から液体窒素温度(77 K)までの幅広い温度範囲において決定したプロトン拡散の活性化エネルギーは180 K以下において2 kJ/molまで低下し、プロトン移動の量子効果が示唆された。プロトン拡散係数の温度依存性をプロトン濃度を変化させながら測定した結果、いずれにおいても低温におけるアレニウスプロットの折れ曲がりが観測されたが、マイナーキャリアである正孔伝導の寄与との分離が難しく、プロトントンネルと断定するには至っていない。今後、プロトン伝導と正孔伝導を分離し、曲がりの原因がプロトン伝導なのか正孔伝導なのか確認する必要性がある。
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