2019 Fiscal Year Research-status Report
1細胞ゲノムの非増幅シーケンスによる未培養微生物の完全長ゲノム取得
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19K22089
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
細川 正人 早稲田大学, 理工学術院, 次席研究員(研究院講師) (60722981)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | シングルセル解析 / NGS / ゲノム |
Outline of Annual Research Achievements |
環境に存在する微生物の99%は実験室で培養できない。この未培養微生物の全貌を明らかにする理想的な方法は、シングルセルから完全なゲノム配列を解読する「シングルセルゲノミクス」を実現することである。本研究では、1細胞ゲノムを断片化させることなく抽出し、ダイレクトシーケンスを行う「究極のシングルセルゲノミクス手法」の開発に挑戦することを目的としている。シーケンスには、ロングリードシーケンス技術を用い、微生物が持つゲノム・プラスミドをまるごと1本、ダイレクトに読み取ることを可能とする。この実現により、不明瞭であった微生物ダークマターの群集構造 と機能の関係の全てを明らかにする革新的技術を提示し、微生物ゲノム分野の新時代を拓き、新たな抗生物質の獲得や共在細菌の機能理解に広く貢献する。 本研究では、2年間の研究期間中に、下記の技術開発と実証実験を行うことを目的とした。 1.マイクロ流体デバイスを用いて微生物シングルセルをドロップレットに封入。2.ドロップレット中で溶菌を行い、ゲノムにDNAバーコードを挿入するなどシーケンス実行可能な形式へ修飾する。 3.ドロップレットを壊し、ナノポアシーケンサーにてシーケンスを実施。 はじめに、大腸菌/疑似微生物コミュニティを用いた実証実験を行い、次いで、ヒトの糞便由来腸内細菌サンプルへの適用を試みた。この結果、ドロップレット内で溶菌した細菌のダイレクトロングリードシーケンスの実効性を確認し、長鎖配列の取得が可能であることを確認した。このほか、旧来の増幅ベースのシングルセルゲノムとロングリードシーケンスの組み合わせにより、1本のコンティグとしてゲノム配列を入手できることを大腸菌および未培養腸内細菌の1種を対象とした試験で確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初目的としていた非増幅ベースの方法論とは異なるが、旧来の増幅ベースのシングルセルゲノム解析方法であってもバイオインフォマティクス解析プロセスの工夫により、ゲノム増幅時に生じうるキメラ配列やバイアスを効率的に除去することが可能となった。さらに、マニュアルの配列キュレーション操作を経て、ゲノムをまるごと一本化して獲得できることが確認できた。また、DNA非増幅ベースの方法は、増幅バイアスを与えずに多数の細菌ゲノム構成を評価することに活用でき、本研究により新たな道筋が発見できており、順調に目的に向かって進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は得られた未培養細菌のコンプリートゲノムの比較解析の実施や、ドロップレット溶菌とロングリードシーケンスを組み合わせた非増幅メタゲノム解析からシングルセル分解能で情報を取り出すプロセスの検討を進める。ゲノム構造多型の解析や挿入・欠失配列のアノテーションなどを行い、腸内細菌のホストとの共在関係や遺伝子の伝搬について考察する。
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Research Products
(5 results)