2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K22133
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Research Institution | Institute for Molecular Science |
Principal Investigator |
須田 理行 分子科学研究所, 協奏分子システム研究センター, 助教 (80585159)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ダイヤモンド / 表面修飾 / 電気二重層トランジスタ / 超伝導 |
Outline of Annual Research Achievements |
ダイヤモンドはあらゆる物質中で最高クラスのデバイ温度を持ち、常圧における高温超伝導実現の候補物質であるにもかかわらず、最高転移温度はわずか11.4 Kに留まっている。これは、ホウ素の添加に伴う"乱れ"の影響によるものであると考えられており、乱れを排除したダイヤモンドにおいては100 Kクラスの転移温度が実現すると指摘されている。本研究では、ダイヤモンド表面に化学修飾を施すことでポテンシャルの乱れを最小化したダイヤモンドを作製し、電気二重層トランジスタを作製することで、最終的に静電キャリアドーピングによる電界誘起高温超伝導の実現を目指している。本年度は、まず原子レベルで平滑な表面を有する単結晶ダイヤモンドの作製を行った。市販の表面研磨(111)配向単結晶基板上にマイクロ波化学気相成長法によりエピタキシャル成長を行った。気相成長時の製膜条件を極端に遅くした条件を用いることで、原子間力顕微鏡によりダイヤモンドのシングルバイレイヤーステップ(0.206 nm)構造の観察が可能なダイヤモンドの作製に成功した。製膜後の水素プラズマ処理により表面を水素終端化した後、表面に末端オレフィン(1-dodecene)を塗布し、不活性ガス雰囲気下で波長:254 nmのdeep UV光により光化学反応を行うことで、表面修飾を行った。原子間力顕微鏡による観察、接触角測定などによって表面修飾を確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は当初の予定であった原子レベルで平滑な単結晶ダイヤモンドの作製と表面化学修飾に成功しており、デバイス化の検討まで進めることが出来ており、概ね計画通りに研究が進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、EDLTデバイスの作製と電界誘起超伝導の観測を目指す。フォトリソグラフィーによりEDLT用のアルミナ絶縁膜(ホールバー構造)およびソース、ドレイン、ゲート電極を製膜する。ゲート電極及びチャネル層部分をイオン液体によりコートすることでEDLTを作製する。イオン液体には、表面修飾ダイヤモンドの疎水性表面に対し高密度キャリアドーピングが可能であると考えられる1-ethyl-3-methyl-imidazolium tris(pentafluoroethyl) trifluorophosphate を用いるが、測定結果をフィードバックしながら、最適なイオン液体を検討する。電界効果の測定には物理特性測定装置を用いる。電気伝導測定、ホール効果測定、磁気抵抗効果測定などを組み合わせ、注入キャリア密度、キャリア移動度、磁気抵抗、転移温度を評価し、表面修飾分子の選択へと測定結果をフィードバックする。最終的に、ポテンシャルの乱れを最小化した系を構築し、不純物添加による転移温度(11.4 K)を超える電界誘起超伝導の観測を目指す。また、強電界によって誘起される金属相や超伝導相は二次元性を有することが想像される。強磁場を利用したドハース・ファンアルフェン効果や臨界磁場の角度依存性測定を用いることで、金属・超伝導相の次元性を評価し、バルクの超伝導との類似性・相違性も明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
本年度に調達予定であった物品、予定していた出張予定がCOVID-19による社会情勢の変化に伴い中止、延期となり、次年度使用額が生じることとなったものの、調達予定であった物品は次年度に購入を予定しており、期間全体を通じた予算使用計画には大きな変更はない。
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Research Products
(11 results)