2019 Fiscal Year Research-status Report
新規光誘導型デグロンを用いた生命機能操作技術の創出
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19K22378
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
深谷 雄志 東京大学, 定量生命科学研究所, 講師 (00786163)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | ショウジョウバエ / オプトジェネティクス / 転写 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ショウジョウバエ初期胚で標的タンパク質の分解を光照射によって誘導する新規デグロン技術の開発に取り組んだ。植物の青色光受容体に由来するLOV2ドメインの構造変化を利用し、光照射時においてE3ユビキチンライゲースと標的タンパク質の相互作用が特異的に誘導される実験系の構築を行った。特に本研究では、近年開発されたLOV2ドメインを用いたiLID-SspBと呼ばれるタンパク質間相互作用の光誘導型系をショウジョウバエ初期胚へ導入することを試みた。新たにトランスジェニック系統を作出し、イネ由来F-boxタンパク質であるOsTIR1、あるいはショウジョウバエ由来F-boxタンパク質であるSlmbのN末端領域(NSlmb)とiLIDの融合タンパク質を、初期胚において発現させた。分解の標的タンパク質として本研究では、ゲノム構造の制御に必要なCTCFやRad21、Wapl、Npblを対象とし、ゲノム編集によって各因子のC末端領域にSspB-3xFLAGタグを挿入した系統を新たに作出した。iLID系統とSspB系統を掛け合わせ、得られた初期胚に対し青色光を照射し解析を行ったところ、分解の誘導は確認されなかった。F-boxタンパク質とiLIDの融合タンパク質におけるタグの位置や、発現プロモーターを改変した新規系統を新たに作出しさらなる検証を行ったが、依然として分解誘導は見られなかった。そこで新たに、シロイヌナズナ由来の光受容体であるCry2を用いた実験系について検証を行った。Cry2は青色光照射によってオリゴマー形成を誘導する性質を有しており、標的タンパク質に付与することで光依存的な凝集を誘導することができる。ゲノム編集により初期胚発生に必須の転写因子であるBicoidのC末端にCry2を挿入し光を照射したところ、その機能を光依存的に阻害することに成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画していたiLID-SspBシステムについては様々な条件検討を行ったものの、光依存的な標的タンパク質の分解は確認できなかった。一方でCry2を用いた転写因子の光操作系を構築することに成功した。このことにより、分解を介さずに凝集によってタンパク質の機能発揮を阻害することが可能となる。本手法は分解誘導に伴うタイムラグの影響を回避し、速やかに標的因子の機能を光依存的に阻害できるという利点を有する。
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Strategy for Future Research Activity |
Cry2を用いたオプトジェネティクス技術と、MS2/MCPシステムを用いたライブイメージング技術を組み合わせることで、標的因子の機能を光阻害した際における転写活性の変化を定量解析する実験系を確立する。これまで解析の対象としてきたBicoidだけではなく、その他の転写因子や、CTCFやRad21などのゲノム構造化因子にまで解析の対象を拡張し、転写制御における未知の役割を解明する。特に、エンハンサー・プロモーター相互作用や、「転写バースト」と呼ばれる転写活性の不連続性が制御される仕組みについて、詳細な解析を行う。
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Causes of Carryover |
初年度は主に実験系の構築と条件検討に注力して研究をすすめたため、当初の計画よりも実際の使用額は下回った。次年度の解析に用いる経費として有効活用する。また成果発表に関わる旅費や、論文出版費用として使用することを計画している。
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Research Products
(1 results)