2019 Fiscal Year Research-status Report
癌細胞シグナル活性化因子14-3-3ζを標的とした新規膵臓癌治療薬の開発
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19K22568
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
佐谷 秀行 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 教授 (80264282)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
齋藤 潤 慶應義塾大学, 医学部(信濃町), 共同研究員 (80837378)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 14-3-3ζ / benzaldehyde |
Outline of Annual Research Achievements |
Benzaldehyde(BA)は正常細胞には細胞傷害性をほとんど示さず、膵臓癌細胞BxPC3、肺癌細胞株A549などに対して顕著な腫瘍抑制効果を示す。BAは癌細胞で活性化されているPIK3/AKT/mTOR、ERK, NFκB, STAT3などの複数の経路を抑制することが確認された。単一の物質が複数の癌活性化経路を抑制するメカニズムは癌細胞シグナル活性化因子である14-3-3ζが癌で活性亢進経路に存在する複数のクライアント蛋白のリン酸化部分に結合する蛋白蛋白間結合をBAが抑制するためにクライアント蛋白のリン酸化状態が低下するためである事を確認した。 14-3-3ζはリン酸化を含むアミノ酸配列に結合能を有するアダプター蛋白で哺乳類にはβ, ε, η, γ, θ, σ, ζの7つのアイソフォームがあり数百のクライアント蛋白が存在し、細胞における代謝、細胞周期、蛋白輸送、シグナル伝達、アポトーシスなど様々な作用に関わっていることがわかってきている。特に14-3-3ζは多くの癌で高発現しており、腫瘍形成能・転移能・薬剤耐性能・放射線耐性能に関わる予後不良因子であることが明らかとなってきており、癌治療のターゲットとして注目されているが未だにその阻害効果を持った分子標的薬は実用化していない。 申請者らは、14-3-3ζ抑制作用を有するBAを用いて、その有効性を高める投与方法や、既存治療との併用における相乗効果を見出すことにより、難治性膵臓癌に対する新規治療薬として実用化されることを目指してている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
Benzaldehyde(BA)が放射線耐性を獲得した細胞に対して有効性を発揮する事が確認され、更にその事から14-3-3ζの作用によって放射線耐性が獲得される可能性を見出しつつある。2種類の膵臓癌細胞株を用いて連日2Gy ずつ計50Gyの放射線照射を行うことで放射線耐性株を作製した。BAと放射線治療の併用効果を見るためcolony formation assayで検討したところ、親株おいては相乗効果の確認はなされなかったが、放射性耐性株においてはBAに対する感受性が高まり、放射線治療とBAの相乗的な抑制効果が得られることが確認された。又、BAが親株よりも放射線耐性株に対して有効性が高い事から、14-3-3ζがどのような分子を介して放射線耐性獲得に働いているかを探索しており、メカニズム解明を目指している。
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Strategy for Future Research Activity |
放射線抵抗性とHIF1の関与はこれまでに報告されている。研究代表者らが以前施行した膵臓癌細胞株を用いたマイクロアレイ解析の結果、BAによる抑制を認めたいくつかの転写因子は癌細胞の低酸素応答によって影響される分子であることに着目し、BAが放射線抵抗性株に感受性を示すのは14-3-3ζがHIF1と関わって転写制御を行うシステムが存在するのではないかと仮説を立て、その可能性を証明していく。方法:①膵臓癌細胞株において、14-3-3ζを介した転写制御に関わると考えられる複数の分子をそれぞれsiRNAにてノックダウンし、低酸素応答が抑制できるかを蛋白発現レベル、遺伝子発現レベルから評価する。②ChIP assayを用いて前記の分子がクロマチンと結合して転写に関わっているか、また、それをBAが抑制するのかを確認する。③共焦点顕微鏡を用いて低酸素条件下の膵臓癌細胞株における前記の分子の発現と局在がBAによって変化を起こすかを確認する。
膵臓癌マウスモデルを用いてBAの膵臓癌に対する有効性と標的分子の同定を行う。方法:①KRAS変異, p53変異を導入したマウスから発生した膵臓癌細胞株(KPC cell line)を取得し、マウスの皮下及び膵臓同所に移植を行いBA投与群、非投与群における腫瘍増殖抑制効果・転移能の変化などを評価する。②腫瘍組織の免疫組織染色を行い、低酸素応答によって変化する分子群の発現変化を確認し、機能分子を同定する。
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Research Products
(1 results)