2019 Fiscal Year Research-status Report
「血液くも膜関門排出輸送に基づく中枢解毒」仮説の実証研究
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19K22599
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
立川 正憲 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (00401810)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
斉藤 貴志 名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(医学), 教授 (90360552)
吉良 潤一 九州大学, 医学研究院, 教授 (40183305)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 血液くも膜関門 / 脳脊髄液 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経変性疾患では、病原性タンパク質や神経毒性物質などの老廃物が、脳内に過剰に蓄積することで、脳機能障害をもたらすことが知られている。近年、脳実質内で産生されたbeta-amyloidが、血管周囲腔を通って、脳脊髄液(CerebroSpinal Fluid, CSF)に排泄される経路の存在が報告されている。しかし、くも膜下腔内CSFに流れ込んだ老廃物が、CSF外にどのように排泄されるのか、は不明なままである。そこで本研究では、くも膜を解剖学的実体とする血液-くも膜関門(Blood-Arachnoid Barrier, BAB)が、脳内/CSFからの老廃物のくみ出し輸送を担うとの仮説を実証することを目的とした。本年度は、髄液内に蓄積する物質を定量的に解析するために、液体クロマトグラフィーを連結した高感度・高分解能の質量分析装置を用いた標的タンパク質定量及び網羅的低分子代謝物定量の基盤構築を行った。具体的には、神経変性疾患や非神経変性疾患の各症例において脳内に蓄積することが報告されているタンパク質について、定量対象とするペプチド配列を決定するとともに、分析条件の最適化を行った。さらに、脳実質細胞から分泌されると想定される病原性タンパク質を含む細胞外小胞(エクソソーム)の特性を明らかにするために、培養細胞の培養や小胞の回収条件の検討を行った。以上の結果をもとに、神経変性疾患病態においてCSF中に蓄積する病原性タンパク質や神経毒性物質の同定、及びラットin vivo大槽内投与法を用いて、くも膜を介したCSF消失の分子機構を探索する計画を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度は、研究計画の成否を決める質量分析条件の最適化と細胞外小胞(エクソソーム)の回収方法の検討を中心に行った。神経変性疾患病態において脳脊髄液中に蓄積する病原性タンパク質や神経毒性物質の同定、及びラット大槽内投与法を用いた消失機構の解明のための計画が遅れているが、次年度において計画推進の目途がついた。
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Strategy for Future Research Activity |
神経病理学を専門とする研究分担者との連携を一層強化することで、ヒト脳脊髄液検体を用いた解析及び、動物モデルにおける脳脊髄液動態とヒト病態との相関性の解析を加速させる。具体的には、脳脊髄液検体の前処理方法の最適化、高分解能質量分析によるタンパク質やペプチドの定量解析のハイスループット化、及び動物モデル構築に向けた標的遺伝子の選定を行うことによって、研究推進を図る。
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Causes of Carryover |
今年度は、質量分析条件の最適化と細胞外小胞(エクソソーム)の回収方法の検討に注力した結果、脳脊髄液中物質の解析及びin vivo解析に遅れが生じ、次年度使用額が生じた。次年度は、条件検討に一定の目途がついたことから、残された計画を推進するため、試薬の購入に使用する。
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Research Products
(3 results)