2019 Fiscal Year Research-status Report
特定神経ネットワークの人工的制御技術を駆使した全身麻酔薬の作用機序の解明
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19K22652
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
紙谷 義孝 新潟大学, 医歯学系, 准教授 (90381491)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 美佳 新潟大学, 医歯学系, 助教 (20774061)
倉部 美起 新潟大学, 医歯学系, 助教 (30635579)
上野 将紀 新潟大学, 脳研究所, 教授 (40435631)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 青斑核 / 麻酔薬 / 薬理遺伝学的手法 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的:全身麻酔時の意識消失や覚醒に深く関与しているとされている青斑核に注目し、覚醒下の動物において麻酔薬を投与した際の意識消失から覚醒までの一連の経過を解析することで、意識消失・覚醒のメカニズムにおける青斑核ニューロンの役割を解明することである。 当該年度の研究内容:青斑核NA(ノルアドレナリン)ニューロンを特異的に制御可能なラットの作成を行った。NA神経特異的プロモーターを用いたアデノ随伴ウイルス(AAVPRSx8/hM3Dq)を作製し、このAAVを用いてhM3Dqがラット青斑核特異的に発現することを免疫組織学的に確認した。次に、AAV導入後のラットを用いて、青斑核NAニューロンをCNO腹腔内投与によって人為的に興奮させた際の、全身麻酔の作用を行動学的および電気生理学的に解析した。その結果、CNO投与によって揮発性麻酔薬による麻酔導入・覚醒時間はわずかに変化するのみであった。一方で、静脈麻酔薬(プロポフォール)による麻酔導入時間は著明に延長し、覚醒時間も著明に短縮した。電気生理学的解析には、当初予定していた覚醒状態での記録が困難であったことから、まずウレタン麻酔下で麻酔薬を投与した。その結果、青斑核ニューロンの活動電位に対する揮発性麻酔薬の影響には一定の傾向が認められなかったが、プロポフォール投与によって活動電位は著しく減少した。さらにCNO投与によって、プロポフォール投与時の活動電位は増加した。 意義・重要性:揮発性麻酔薬と静脈麻酔薬(プロポフォール)とで、青斑核NAニューロンの応答様式は異なった。また、人為的な青斑核活性化は、プロポフォールの麻酔作用を劇的に変化させたが、揮発性麻酔薬の作用に明らかな変化を及ぼさなかった。 プロポフォールは揮発性麻酔薬に比べて、より青斑核特異的な作用を持つ可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度中に、青斑核NAニューロンを特異的に制御可能なAAVの作製に成功し、青斑核での発現まで確認できた。さらに、行動学的実験と電気生理学的解析まで行うことができたため、当初の計画以上に進展したと思われた。 しかし、無麻酔下の動物からの電気生理学的解析が予想以上に困難であり、現在そのための新たな装置を試しているところである。また、麻酔深度の解析をより客観的に行うために当初の予定にはなかった脳波解析も同時に行うこととし、脳波解析には成功したため、おおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、無麻酔下動物からの細胞外記録法を確立するために試行錯誤しているところであるが、改良した電極やリード線がうまく作動することが確認できた。 次年度はこれを用いて麻酔前から麻酔導入・維持・覚醒までの一連の細胞外記録および脳波記録の解析に取り組む予定である。さらに、一連の記録が可能であった場合はAAV導入動物で、青斑核を活性化させた場合の麻酔薬の作用を解析する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度の経費として、電気生理学的記録に必要な特注の電極やリード線の費用、消耗品である各種薬剤(全身麻酔薬、抗体)の費用、海外発表のための旅費、論文校正費用が必要となる。
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Research Products
(5 results)