2021 Fiscal Year Annual Research Report
円錐切除後妊娠の腟分泌物プロテオーム解析を用いた子宮頸部が担う妊娠維持機構の解明
Project/Area Number |
19K22686
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
近藤 英治 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 教授 (10544950)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
最上 晴太 京都大学, 医学研究科, 講師 (40378766)
伊藤 慎二 京都大学, 医学研究科, 特定助教 (50362512)
千草 義継 京都大学, 医学研究科, 助教 (80779158)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 腟分泌物 / プロテオミクス / Mucin / 円錐切除 / 妊娠 |
Outline of Annual Research Achievements |
京都大学とその関連施設を含めた全10施設で妊婦健診を受けた円錐切除後妊娠の腟分泌物を計114サンプル回収できた。上記サンプルを用いて、交絡因子となりうる妊娠分娩歴、子宮頸管長をマッチングさせ、早産群13例と正期産群13例のNested case-control cohortを作成した。この計26例の腟分泌物サンプルを、ナノ流速液体クロマトグラフ(NanoLC)で分離した後、四重極-飛行時間型質量分析装置を用いて、網羅的に蛋白を同定・定量し、早産群で有意に上昇していた蛋白を6個、有意に低下していた蛋白を11個抽出した。早産群で低下していた蛋白のうち、粘液関連蛋白であるMucin5に着目し、その局在をヒト子宮組織を用い免疫組織化学染色法で確認した。Mucin5B, Mucin5ACともに子宮頸管腺に局在しており、 ヒト子宮組織の一部はMucin5の分布の多くが下方(尾側)に存在していた。これらの結果より、子宮頸部円錐切除による早産は、物理的な胎児保持力の低下よりむしろ、子宮頸部でのMucin5B, Mucin5ACの分泌が低下による上行性感染(腟内の病原体が子宮頸部を介して子宮内感染を惹起)が原因である可能性が高いことを示した。さらに、ヒト初代子宮頸部上皮細胞細胞にエストラジオールを添加すると、Mucin5Bの発現が上昇することを示し、Mucin5Bが妊娠時に上昇する性ホルモンによって調節されていることを明らかにした。 本研究による円錐切除後妊娠が早産となる機構の解明は、円錐切除後妊娠の早産だけにとどまらず、早産の原因の大部分を占める子宮頸管無力症と上行性感染が起こる機序を解明する可能性があり、早産の新たな治療戦略開発が見出される可能性がある。本研究で同定したMucin5は、早産予測マーカーや早産予防目的の補充療法の開発に直結する。
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