2020 Fiscal Year Research-status Report
HLA genome editing of dental pulp cells for iPS cell stock.
Project/Area Number |
19K22707
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Research Institution | Gifu University |
Principal Investigator |
手塚 建一 岐阜大学, 大学院医学系研究科, 准教授 (50236973)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
上岡 寛 岡山大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (80253219)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 歯髄細胞 / ゲノム編集 / 乳歯 / ブロックチェーン / トレーサビリティ / CRISPR |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年度に引き続き、本年度もコロナウイルス感染症対策のために、岡山大学からの乳歯供給を受けることができなかった。そのため、細胞のトレーサビリティをブロックチェーンに記録する「ShizuiNet」の開発に注力した。最新のSymbolブロックチェーン技術を用いて、細胞の採取、CPCへの移送、マスターストック製造、そしてiPS細胞誘導や製品出荷までカバーできるシステムを構築した。昨年度より引き続きテスト環境として使用しているMijin Catapultブロックチェーンに加え、高い透明性と持続性を有するパブリックのSymbolブロックチェーンにこれらの情報を記録するハイブリッド構成になった。その結果、当初の計画であった岡山大学から岐阜大学への乳歯送付にとどまらず、ドナーから採取した歯髄細胞をiPS細胞に加工して、さらに患者まで届けるまでのトレーサビリティが実現可能になった。 また、DP144にゲノム編集用CRISPR/dCas9-BE3を導入する実験を進め、FACSソーティングによって、HLA-A2抗原を欠損した細胞を収集することに成功した。エンドヌクレアーゼ活性とそれに伴う修復ミスによって遺伝子を不活化する従来の方法に比べ、初代培養細胞に対するゲノム編集の効率は低く、条件設定に多くの時間を割くことになった。しかし、少ないながらもHLA-Aが陰性となった細胞画分の採取と培養に成功したため、今後ゲノム解析をおこなって詳細を調査する。 全体としての進捗は概ね予定通りであり、「ShizuiNet」の開発については、学内予算の獲得などもあって、予定よりも大幅に進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
コロナウィルス感染症拡大にともない、共同研究先の岡山大学での乳歯提供がストップしてしまった。また、岡山大学と岐阜大学の間の研究者の行き来も大きく制限されたままである。この状況において新規の乳歯細胞を収集するのは困難と考え、乳歯採取から細胞のマスターストック構築、iPS細胞の誘導、細胞加工、再生医療への細胞供給までをシミュレーションする方法に切り替えた。そして、汎用性の高い細胞のトレーサビリティシステムを、最新のブロックチェーン技術の導入によって設計できた。これについては、日本再生医療学会の年会で報告した。歯髄細胞に対するゲノム編集には、当初予定より遅れている。論文に報告されたような効率では変異が導入されず、gRNAの再設計を繰り返し、ベースエディターを交換したりしながら、2%程度のHLA-A画分を採取することに成功した。初代培養細胞へのゲノム編集についてはほとんど報告がないが、本研究によって効率の問題提起ができるだろう。
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Strategy for Future Research Activity |
歯髄細胞のトレーサビリティソリューションである「ShizuiNet」の、概念設計と実験室レベルの実証実験がほぼ完了した。今後は、このプロジェクトを実用化研究に移行させて、岡山大学やiPS細胞研究財団の協力を得ながら、事業化、製品化のためのプロトタイプデバイス設計へと移行する。実用化への資金源として、JSTのSCOREにエントリー済みである。ゲノム編集については、ようやく出口への道筋が見えてきたところであるが、今後はターゲット領域の変異の確認や、オフターゲット変異について、次世代シーケンサーを活用して解析をおこない、成果を論文にまとめる。また、われわれの他プロジェクトで、歯髄細胞が作るエクソソームに関する研究が進展している。歯髄細胞由来エクソソームにはHLAクラスIが発現していることが確認できたため、HLAゲノム改変歯髄細胞を用いた抗原性の低いエクソソーム製造の研究への道筋が見えてきた。
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Causes of Carryover |
岡山大学での新規乳歯提供受付ができず、それに伴って支出予定であったHLA検査費等が生じなかったため。今年度に繰り越して、引き続き歯髄細胞トレーサビリティシステム開発や、既存歯髄細胞を用いたゲノム編集効率向上の研究に使用する予定である。
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Research Products
(7 results)