2019 Fiscal Year Research-status Report
分子進化情報を活用した耐性化の可能性が低い新たな感染制御法の確立
Project/Area Number |
19K22710
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
山口 雅也 大阪大学, 歯学研究科, 助教 (00714536)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
住友 倫子 大阪大学, 歯学研究科, 講師 (50423421)
中田 匡宣 大阪大学, 歯学研究科, 准教授 (90444497)
広瀬 雄二郎 大阪大学, 歯学研究科, 特任助教 (90788407)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2021-03-31
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Keywords | 肺炎球菌 / 化膿レンサ球菌 / BgaA / ゲノム解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、肺炎球菌の菌体表層タンパク質であり、分子進化解析から変異が制限されていることが示唆された、β-ガラクトシダーゼBgaAに着目し,病態形成に果たす役割について解析した。 ヒトおよびマウス血液とTIGR4野生株もしくはbgaA 欠失株を混和した結果,bgaA 欠失により両血液中での生存能は有意に低下した。ヒト培養細胞への菌体付着・侵入試験にて,bgaA 欠失株は野生株と比較して肺胞上皮由来細胞,肺微小血管内皮細胞および脳血管内皮細胞への付着・侵入率の有意な低下を認めた。次に,野生株もしくはbgaA 欠失株をCD1 マウスに経静脈感染させ,マウス生存率,臓器への菌体伝播能,およびマウス組織像を比較した。bgaA 欠失株感染群では,野生株感染群と比較して,有意に生存率は上昇した。BgaA が臓器への菌体伝播能に関与するかについて検討するため,感染36 時間後の血液,脳,肺,肝臓,膵臓,および腎臓における菌数を比較した。その結果,野生株感染群とbgaA 欠失株感染群の各臓器における菌数に有意差を認めなかった。しかし,感染36 時間後のマウス各臓器をHE 染色し,組織像を観察したところ,野生株感染マウスの組織では,出血と血管の閉塞が認められた一方,bgaA 欠失株感染マウスの組織では,その傾向が弱まった。したがって,BgaA は,敗血症において,肺炎球菌の血管内皮細胞への付着および侵入を促進し,臓器の出血と組織傷害を誘導する病原因子である可能性が示された。 化膿レンサ球菌に関して、劇症型感染症由来、ならびに非劇症型由来の合計161株を収集し、次世代シーケンサーによるゲノム情報の解読を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度は、分子進化解析に基づいて標的分子BgaAを選出し、肺炎球菌の病原性に果たす役割の解析を行った。その結果、BgaAがマウス感染時の臓器の傷害に寄与する病原因子であることが示唆された。また、化膿レンサ球菌に関して、近年日本にて分離された化膿レンサ球菌の臨床分離株を収集し、ゲノム情報の解読を行った。今後、得られたゲノム情報を用いて解析を行った行く予定である。 以上の結果から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に、当初の研究計画に沿って実験を行う。一方で、ゲノム情報解析や遺伝子発現解析について、新たな解析技術が登場していることから、これらの解析については積極的に最先端の技術を本研究計画にて実施することで、研究計画の質を向上させることを目指す。
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Causes of Carryover |
2019年度にて受領した他の科研費課題や民間の研究費にて、当初予定していた学会に出席する旅費が賄われた。また、余剰の試薬の使用や、オープンソースの解析ソフトウェア、共用の大型計算機を利用することによって不必要な経費の使用を大きく抑えた。 2020年度は、本プロジェクトに専任の実験補助者を雇用することで迅速な計画遂行を目指す。
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Research Products
(36 results)