2020 Fiscal Year Research-status Report
Why do some persons with autism feel that a watermelon with salt is not tasty?
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19K22885
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Research Institution | National Rehabilitation Center for Persons with Disabilities |
Principal Investigator |
和田 真 国立障害者リハビリテーションセンター(研究所), 研究所 脳機能系障害研究部, 研究室長 (20407331)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小早川 達 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 情報・人間工学領域, 上級主任研究員 (70357010)
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Project Period (FY) |
2019-06-28 – 2022-03-31
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Keywords | 偏食 / 味覚 / 時間 / 自閉スペクトラム症 / 発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では「基本味間の時間的に過剰な統合が、味覚の問題に起因した偏食を引き起こす」という仮説のもと、味覚の時間情報処理を実験的に検証し、偏食の個人差と比較することで、発達障害者における偏食の背景にある神経メカニズムを理解し、エビデンスにもとづいた解決策を提案することを目的とする。 令和2年度には、コロナウィルス感染症の流行状況に留意しつつ、研究分担者・協力者と連携して、短い刺激時間差で複数の味刺激を提示できる味覚刺激装置の開発に取り組んだ。年度末までに、MEG室での機器動作を確認し、具体的なタスク設計が始められるようになった。味覚刺激は、接触をともない、廃液には唾液が含まれるため、実験参加者を伴う実験開始は、コロナウィルス感染症の流行が落ち着いた段階を予定している。一方、感染症リスクを伴わないオンラインでの調査を先行して進めた。味知覚に対する主観的な感想、偏食を含む食行動、色や形など視覚情報と味覚の関係性、フルーツや野菜に対する好みや味覚等との関係性などを問うオンラインのアンケートフォームを作成し、80名以上から回答を得た。その結果、主観からも味知覚の時間的特性が想起されるような結果を得た他、特定の食行動と自閉傾向との関連も示唆された。さらに特定の色や形から想起される味に関する特徴と自閉傾向との関連も見出した。これらの成果の一部は、論文としてとりまとめて投稿した。 以上のような研究を通じて、味覚情報処理の時間特性や他の感覚との相互作用について明らかにして、その個人差と偏食等との関連を明らかにすることで、偏食の認知神経科学的な基盤を明らかにすることを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和2年度は、味覚刺激提示装置の制作と、オンラインのアンケート調査を実施した。加えてインタビューから関与が示唆された感覚統合についての検討を深めた。現時点では、コロナウイルス感染症流行の影響を受けて、味覚実験の開始は先延ばしとなっているが、MEG室に据え付けた上での実験装置の動作を年度内に確認できた。さらに、オンラインの調査では、多数の調査項目について、80名以上の方から回答をいただくことができた。特に、味覚-視覚など感覚間の連合に関して、順調に解析が進み、論文投稿を行うことができた。他にも、食行動や味知覚について興味深い結果が示唆されており、解析を進めていく。したがって、実験開始は先延ばしとなったものの、オンライン調査からは想定以上のち県が得られており、令和2年度の研究進捗は、順調であると判断している。
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Strategy for Future Research Activity |
令和3年度は、上半期で味覚実験について、刺激装置のセットアップを完了させ、実験者を対象に予備実験を開始する。その後、夏頃を目処に、ASD者を含む外部の実験参加者による実験を開始することを計画している。その際、MEG計測も同時並行して進める。オンラインアンケートから得られた知見を精査して、研究成果の発表を行うとともに、味覚実験との比較に用いる調査項目を抽出する。なお、当施設において、MEGは本年度で運用終了の予定であり、MEGを用いた計測は、年度末(令和4年3月)までに実施する計画である。ただし、ヒトを対象とする実験を行う際には、コロナウイルス感染症の流行状況に留意し、実験参加者・実験者の安全を十分に配慮して実施する。そのため、外部および病院の実験参加者を対象とする味覚の心理物理実験は、コロナウィルス感染症の流行状況がさらに落ち着いた段階で開始する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の流行により、味覚を対象にした心理物理実験の開始が先延ばしになり、実験・解析に関わる技術協力員および外部の実験参加者への謝金を支出していないため、多くの次年度使用額が生じた。 本年度以降、約100万円を実験補助・解析、心理評価に関する技術協力員への謝金として、約50万円を実験参加者への謝金として支出する予定である。実験実施に伴うディスポーサルの部品(参加者の口と接触する部位のチューブや清潔に保つ必要のある配管など)・実験実施に伴う消毒薬等の消耗品として約50万円、約100万円をオープンアクセスジャーナル(3報)の掲載料として計上し、残りを英文校正や機材の輸送費等に用いる予定である。
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Research Products
(6 results)