2020 Fiscal Year Annual Research Report
カント美学における醜さ:「醜の美学」の体系化へ向けて
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19K23001
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
高木 駿 一橋大学, 大学院社会学研究科, 研究補助員 (90843863)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 美学 / 哲学 / カント / 醜の美学 / 感情 / 認識論 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は、2019年度に行った『判断力批判』に基づく醜さの類型化を踏まえて、それぞれの種類の醜さがいかなる関係にあるのか、その体系化の課題に取り掛かった。種々の醜さの関係性、そして体系を考えるために、私たちが醜さを言明する際に感じている感情、つまり「不快の感情」と、抱いている心の動き、とりわけ認識能力の、さらに言えば構想力の働きに着目した。その結果、例えば、純粋な醜さ(単なる不快に対応する醜さ)と崇高の醜さ(崇高に関わる不快に対応する醜さ)との間に連続性があることが明らかになるなど、一部の醜さによって体系が成り立つことが明らかとなった。ただし、類型化したすべての種類の醜さの関係性を把握し、種々の醜さの体系の全貌を解明するまではいたらなかった。得られた研究結果は、非常勤講師として勤務している江戸川大学『紀要』に掲載確定の論文「カントと公的空間:趣味の多元主義からのアプローチ」(2021年度刊行予定)に反映するとともに、2022年度に出版予定の単著『醜さの美学』に盛り込む予定である。また、2019年度と同様に、COVID-19の感染拡大のために、ドイツ・ヒルデスハイムで開催予定であったコロキウムは中止となった。
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