2019 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23006
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中村 真菜美 大阪大学, 文学研究科, 招へい研究員 (10845548)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 美術史 / 比較美術史 / 近世絵画 / 送別画 / 移動と越境 |
Outline of Annual Research Achievements |
江戸時代における「送別」の場に関わる絵画制作の様相を検討すべく、実作品および文献資料の調査研究を行った。まずは全体像の把握を目指し、書籍や国内外の諸機関のオンライン・データベース等からの作品情報の収集と目録化を行った。その過程で、作品の形式などの基本情報をまとめるだけでなく、制作経緯やイメージとテクストの連関、画題などについても分析・解釈を進めた。国内に所蔵される複数の作品については実見調査・写真撮影を実施し、その成果も目録に反映した。江戸時代中・後期の絵画制作における「寄合書」の成立・発展に画家の移動の活発化による歓送の宴の増加が関わると指摘されていることを念頭に置き、この形態の作例を広く収集し、成立過程を通時的に把握し、その制作の有り方について分析を試みた。 また江戸時代にあらわされた日記や紀行記、詩集、書簡等に拠って、送別に関わる事項をまとめ、一覧表・年譜の作成を開始した。来舶清人や朝鮮通信使に関わる送別宴の記録にもあたり、東アジア文化圏における送別文化の広がりを検討するにあたっての足がかりとした。 個別作品にも焦点を当て、昌平黌教官・柴野栗山の邸宅で開催された福山藩儒・菅茶山の送別会に因る「栗山堂餞莚詩画巻」(広島県立歴史博物館蔵)について論文をまとめている段階である。加えて明治時代前期の清国公使館参賛官・陳明遠の送別会に係る『紅葉館話別圖題詞』を通して近代への送別文化の連続性について考察を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の計画では絵画作品および関連する版本・写本の実見調査・撮影を中心としていたが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受けて変更せざるを得なくなった。今後の調査再開に向けて、図録や書籍、オンライン・データベース等を通しての情報収集を進めている状況である。また計画の順序を入れ替え、既に調査を終えていた個別作例に関してより詳細な分析に取り組んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の情勢次第では実見調査を再開し、今年度断念した海外での調査も実現したい。 また本研究は近世の事例を中心とするが、日本における送別画制作について通時的な考察を試みるべく、室町時代の詩画軸からの連続性の問題についても検討を行う。加えて、江戸時代から明治初頭にかけての中国・朝鮮との文化交流に目を向け、東アジア文化圏における送別文化の広がりの様相について考察を進める予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、出張旅費を伴う調査を断念せざるを得なくなったため、残額が生じた。当初計画していた実見調査のために充てたいと考えているが、今後の情勢次第では資料の購入費や複写料に充てる予定である。
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