2021 Fiscal Year Annual Research Report
ジョルジュ・バタイユを起点としたフランス思想史の再構築
Project/Area Number |
19K23018
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
石川 学 慶應義塾大学, 商学部(日吉), 准教授 (60842945)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | フランス思想史 / フランス文学 / 20世紀 / 文学論 / ジョルジュ・バタイユ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、20世紀フランスの作家ジョルジュ・バタイユの思想を参照軸として、アンドレ・ブルトン、ジャン=ポール・サルトル、エマニュエル・レヴィナスという同世代以降の文学者や思想家たちの思想を検証し、もって、バタイユから現代に至る思想史の一系譜を浮かび上がらせようとするものである。2021年度は、前年度までに獲得した知見を補完し取りまとめるべく、とりわけサルトルならびにレヴィナスとの思想連携と交錯とをいっそう解明していくことが企てられた。 サルトル関連では、前年度に着手していた、サルトルによるブルトン批判と第二次世界大戦後のバタイユによるブルトン擁護とを比較対照する作業を進展させた。近年の先行研究の成果を参照しつつ、第二次世界大戦を経たバタイユとブルトンの一定の近接が、サルトル的な政治意識を思考課題として深く共有しつつ、各々の過去の政治的思索を乗り越えようとしていくなかで実現していく道程を検証した。この過程では、レーモン・クノー、ミシェル・レリス、モーリス・メルロー=ポンティといった、各人を媒介する立ち位置にあるとも言える作家たちが双方の思想交流・思想展開に及ぼした影響を、交友関係といった伝記的事実も含めて検討した。 レヴィナス関係では、レヴィナスにおける文学のある種の断念と、哲学的方法論への傾斜という経過が持つ思想史的意味を考察するべく、前年度までに明るみに出したバタイユとレヴィナスの近接性の委細を、バタイユがレヴィナスに対して示す方法面への批判を起点に光を当て直す作業を行った。哲学的言説に基づく哲学(存在論)の乗り越えという、バタイユ自身真剣に企てつつ限界を見出した目論見を選び取るレヴィナスの方法開拓の意欲が、意図するとせざるとにかかわらず、バタイユからの批判に対する積極的応答として解釈可能であることを考察した。
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Research Products
(1 results)