2020 Fiscal Year Research-status Report
「モツ」動作を表す中国語動詞に対するビデオを用いた意味研究
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19K23081
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Research Institution | Reitaku University |
Principal Investigator |
中司 梢 麗澤大学, 外国語学部, 助教 (50844594)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 中国語動作動詞 / ビデオ分析 / ビデオ評価 / モツ / 日中対照比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「モツ」動作を表す中国語動作動詞の意味についてビデオを用いて分析する。中国語の動詞の一般的な特徴として、動作の形によってどの動詞を用いるか細かく分かれるということが挙げられる。研究方法については、母語話者へ調査を行い、そこから得られたビデオデータを分析することで各動詞の動作の形を明らかにするものである。 2020年度は、前年度に引き続き一般的に「持つ」にもっとも対応すると考えられている中国語の基本動詞na2について調査するとともに、日本語の動詞である「持つ」「取る」についても調査した。これらの調査は、コロナウィルス流行のため、全てオンラインで実施した。 具体的には、前者については、複数の中国語母語話者に対してna2が表す4種類の動作のビデオ(具体的には、①物体を手中に収めたのち自分の方向へ引き寄せる動作、②物体を手中に収めたのち持ち上げる動作、③物体を持っている状態、④物体を手中に収めて自分の方向へ引き寄せた後、主体がその場から移動する動作)を見せ、“ 普通話”(中国語の標準語)の基準に即して、よりその動詞らしい動作かどうか、その程度を評価するよう求めた。 後者については複数の日本語母語話者にna2と同様の調査を行い、4種類の動作のビデオを見せて、より「持つ」らしいものはどれか、より「取る」らしいものはどれか評価するよう求め、さらにそこで得られたデータをna2の結果と比較・分析した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度は一般的に「持つ」にもっとも対応すると考えられている中国語の基本動詞na2について調査した。中国語母語話者に調査を行い、4種類の動作のビデオを見せ、よりna2らしいものはどれか評価するよう求めた。 また、日中対照比較も本研究の一環であるため、2020年度は一般にna2に対応すると考えられている日本語動詞「持つ」および「取る」について複数の日本語母語話者にna2と同様の調査を行い、4種類の動作のビデオを見せて、より「持つ」らしいものはどれか、より「取る」らしいものはどれか、評価するよう求めた。さらに、その結果を中国語動詞na2と比較し、次のような結果が得られた。na2と「取る」は動作動詞としての性質が強く、取得義が中心的意味である点で共通する。しかし、「取る」が完全に動的であるのに対し、na2は静的な要素も持ち合わせ、周辺的意味として保持義を表す。また、「持つ」は取得義を表すが、中心的意味は保持義であると考えられる。移動義を表さない点ではna2,「持つ」「取る」は共通するが、移動の要素がna2,「取る」の意味を完全に損なうというほどではないのに対し、「持つ」の場合その意味を否定するほどのレベルである点で異なる。 ただし、コロナウィルス流行のため、全ての調査がオンラインとなり、前提となる対面調査が困難であった。それに伴い、調査件数、調査内容ともに不十分となり、また他の動詞についての調査も遅れている。 これらのことから、やや遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、引き続き「モツ」動作を表す中国語動詞”抓、握、托、捧”等についてのデータ収集し、分析を行う。なお、関連して中国へ出張し、インフォーマントに聞き取り調査に行う予定であるが、これについてはコロナウィルスの流行の情況等を鑑み、慎重に検討したい。さらに、代替措置となるオンライン調査の方法についてもさらに研究を進めたい。 また、同様の調査を日本語母語話者に対して日本語動詞「つかむ、握る、提げる」等について行う。得られたデータから、「モツ」動作を表す動詞の日中対照比較を行う。 研究成果は2021年度国内開催の全国大会、および中国における国際学会にて報告するとともに、論文としても発表することを予定している。ただし、学会での報告についてはコロナウィルスの流行の情況を見極め、対応したい。
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Causes of Carryover |
主として、旅費、および人件費がコロナウィルス流行のため、使用できなかったことによる。これについては2021年度の消耗品費用(図書)、旅費、人件費に充当する。
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