2020 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23098
|
Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 山海 北海道大学, 文学研究院, 専門研究員 (20845036)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
|
Keywords | 神聖ローマ帝国 / 近世ドイツ史 / 共和主義 / 連邦制 / ヘルマン・コンリング / 帝国国制 / 皇帝 / 帝国諸侯 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、神聖ローマ帝国の学識者H・コンリング(1606~81年)の思想の分析を通じて、近世帝国の連邦制的特質に対する、共和主義の影響を検証することを目的としている。 そのために、三十年戦争(1618~48年)末期におけるコンリングの活動に着目した。1640年代の帝国では、対外的には和平の締結に向けた動きが取られた一方で、対内的には長期にわたる戦乱によって荒廃した、国政の再建が模索されていた。そこにおいてコンリングは、諸侯の求めに応じて精力的に国政論を展開し、数多くの著作を著した。 本年度は、前年度から引きつづき分析を進めている『ドイツ国の裁判権について(Dissertatio de Judiciis Reipublicae Germanicae)』(1647年刊)に加えて、『ドイツ人のローマ帝国について(De Germanorum imperio romano liber unus)』(1643年刊)の読解と分析を行った。 後者の文献は、コンリングが神聖ローマ帝国のなりたちを歴史的に考察したものであり、人文主義者としての彼の名声を一躍高めたものである。本書の分析から、皇帝の絶対的な優越性を否定し、諸侯のなかの第一人者として位置づけようとする、コンリングの共和主義的な国制観が明らかになった。歴史書や法文書の分析に基づき、古代ローマ帝国と神聖ローマ帝国の連続性を反駁しようとする、コンリングの政治思想が本書において明確に打ち出されている。 『ドイツ国の裁判権について』は、こうした理論の実践的応用を目指したものであり、帝国最高裁判所の改革について論じた書である。本書はブランデンブルク選帝侯の宰相に上奏されたものであり、当時帝国において進められていた国制改革に関する議論との関連がうかがえる。これら2つの著作を分析した結果については、次年度において論文の形で公表することを目指している。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウィルスの流行により、本来予定していたドイツ・オランダにおける史料調査を行うことができなかった。 それにより、研究は大幅な軌道修正を行い、従来は研究の対象としていなかった『ドイツ人のローマ帝国について』を新たな分析対象に加えた。これにより、成果の公表について遅れが生じている。 なお、2つの文献の分析については順調に進展しており、理念と実践の両面におけるコンリングの国制論はおおむね整序できていると言える。
|
Strategy for Future Research Activity |
史料調査を断念したことにより、研究方針を変更し、事業を延長することとなった。 次年度においては、『ドイツ人のローマ帝国について』、『ドイツ国の裁判権について』の分析結果を公表するとともに、コンリングの思想が当時においてどれほどの影響を有したのかの検証を行う。 そのために、コンリングから『ドイツ国の裁判権について』を献じられたブランデンブルク選帝侯や、コンリングの教え子のうち、各領邦において顧問官として活動した人物の活動を追跡する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの流行により、本来予定していたドイツ・オランダでの史料調査が実施できなかったため、旅費、人件費・謝金を要さなかった。 また、史料調査が実現しなかったことによる研究方針の変更のため、購入予定の書籍を選定し直す必要があり、物品費も繰り越すこととなった。 翌年度は、海外渡航がなお制限されていることを想定し、書籍購入のための物品費、ならびに諸外国の文書館に対する、史料の複写請求のための人件費・謝金として利用する。
|