2019 Fiscal Year Research-status Report
Study on degradation prediction of mural painting by AE method
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19K23100
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
周 怡杉 筑波大学, 芸術系, 研究員 (20849252)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | アコースティック・エミッション / 壁画 / 非破壊計測 / 環境変化 / 信号解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はAcoustic emission(AE)法による文化財に、特に壁画に、適用する非破壊計測手法、そして劣化と繋がる信号の解析手法を確立することを目指した。2019年8月上旬、想定調査対象である中国義県奉国寺で昼夜の温度変化に伴い、壁画が発するAE信号の現地計測を試した。しかしAEセンサーの設置困難、信号対雑音比が低い、データ解析の難易度などの問題点があるため、研究計画を再考した。ゆえに本研究は壁画が発するAE信号基礎調査として模擬試験を進展させた。温湿度変化による材質の膨張収縮は、多層構造からなる壁画の劣化要因の一つである。令和元年度は温度変化に伴い壁画が発するAE信号を調査した。奉国寺壁画の材質に基づき、違う重量比の藁か麻繊維を含む藁泥層(藁繊維:0.0/1.5/3.0%)、麻泥層(麻繊維:0.0/0.1/1.0%)、漆喰層からなる模擬壁画片を用意した。奉国寺2019年環境モニタリング情報に基づき温度日較差が一番大きな日の温度変化を参考にし、温度が24時間中に2回11から5℃の間で循環変化する暴露環境を設計し、壁画片暴露試験を行った。現地調査の経験を踏まえて計測機器の仕組みを改善し、「プリアンプ(NF社製:9917)」を追加した。本研究はエッジトリガモードを用いて、0.0225vに達したAE信号波を記録した。暴露中1時間ごとに発したhits数を集計し、hits発生率となる。その結果、繊維含有量の違いにより、温度の低下と上昇をともない、壁画片hits発生率の変化傾向が違うことを証明した。例えば試料「藁0%-麻0%」の場合、温度の低下か上昇を問わず、hits発生率の変化がほぼ見えなかった。しかし試料「藁3%-麻1%」の場合、温度の低下にともない、hits発生率が増加していくが、hits発生率温度の上昇にともない、AE信号数が減少した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
実地試験にて、AEの発生を確認し、本手法の有効性を再確認できた。その一方でデータ解析を効率的にすすめるために、実験条件の設定に関する試験を再構築したため、模擬試験の解析に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
その一、今まで取得したデータの解析と考察。1)繊維含有量の違いにより、温度の低下と上昇にともない、壁画片hits発生率の変化傾向が違う原因を考察する。2)顕著なAEを抽出して波形解析を行い、繊維含有量の違いによりAE信号波の特徴を把握する。 その二、計測仕組みの改善。今まで用いた計測仕組みは多くの部品で構成し、配線が大変複雑なため、現地調査に適用しにくいところがある。さらに、対応する信号分析ソフトウェアがないため、AE信号パラメータの集計が非常に困難になる。したがって計測仕組みの改善或いは設備の取り替えを考えている。関わる情報取集そして取り替え設備の購入を計画している。 その三、各劣化現象の発生前、発生時、発生後に発するAE信号の計測と特徴解析。剥離、塩類風化、凍結融害など壁画における典型的な劣化現象の模擬試験を行い、AE信号計測し、関わるAE信号の特徴を解明する。計測と解析アプローチは以下のように計画する:AE信号パラメタ計測で基本状況を把握→計測条件の調整→本調査を行い→パラメタ計測結果の解析と考察→顕著なAE信号の波形解析を行い(解析ソフトOriginLab、MATLABなどを用いる)→各劣化現象のAE信号特徴をまとめる。
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Research Products
(1 results)