2019 Fiscal Year Research-status Report
Identity reconstruction using archaeological heritage through public archeology in migrant societies.
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19K23119
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Research Institution | Kyoto University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
古手川 博一 京都外国語大学, 京都外国語大学ラテンアメリカ研究所, 客員研究員 (30852371)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | アイデンティティ / アンケート調査 / 発掘調査延期 / 新型コロナウイルス / パブリック考古学活動 / オンライン・リモート活動 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、移民社会におけるアイデンティティ再構築のシンボルとして考古学的な知識を利用することを目的としており、その具体的な実践の場としてメキシコのベラクルス州南部サン・イシドロ村とそこに位置するオルメカ文化エステロ・ラボン遺跡を選択した。研究の第一段階として、現在のサン・イシドロ村や周辺の住人がどのようなアイデンティティを持っているのかを知る必要がある。そこで、2019年9月から12月にかけてアンケート調査の内容を吟味し、決定する作業を行い、メキシコ滞在中の2020年1月に現地で調査を実施した。その際に、次の段階として当該遺跡での発掘調査が必要になることを村人および村が所属する市の関係者に報告し、その概要を説明し、了承と協力の約束を得ることができた。計画ではこのときに発掘調査を実施する予定であったが、メキシコの様々な状況により、発掘期間を4月前半に変更することになったので、その準備をメキシコからの帰国後に行なっていた。しかし、調査対象のメキシコや私が居住するホンジュラスでも新型コロナウイルスの感染が確認され、パンデミックが訪れ状況が一変してしまった。そのため、現地での調査日程を再び変更する必要が出た。現在の両国の状況から現地調査は延期する必要があるので、研究の第4段階として計画していたパブリック考古学活動をこれまでの調査の実績から実施する方法を模索中である。これまでに実施された3次の発掘調査により少なからず考古学データの回収ができているので、そのデータを利用した当該遺跡の考古学的な知識の普及によるアイデンティティ再構築に対する影響力を見ることができると推測される。そこで、現在はメキシコで活動している協力者とその実施方法を協議している。現状を考慮するとかなりの部分でオンラインあるいはリモート活動を実施することが望ましいと考えられるので、その具体的な日時と方法を調整中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前述のようにメキシコ国内の様々な状況から、研究の第2段階として2020年1月に予定していた発掘調査を延期することになった。その後、予測不可能な新型コロナウイルスの影響で状況が著しく悪化してしまったため、発掘調査再延期を余儀なくされた。将来的な発展を見据えている本研究テーマの性格上、最終的には発掘調査を実施する必要があるが、現段階での発掘調査実施時期の再決定が難しいが、研究全体をストップさせることも出来ないため、研究の第4段階として計画していたパブリック考古学的活動を前倒しして実施することにする。そのためには、これまでの調査で回収されている調査対象遺跡の考古学データを再整理して、利用可能な形にする必要がある。当初の計画では「参加型」の講演会や簡易展示を予定していたが、現在の社会的な状況を考慮するとオンラインやリモート活動が効果的であると考えられるので、それに合うフォーマットを新たに準備する必要が出てきた。また、1月に実施したアンケート調査も有効なデータを得るには数が足りていないし、データのバリエーションを増やすためにも、再び広範囲で実施し、回答を回収する必要がある。これも、オンラインやリモートで実施できるか検証する必要があるが、これまでの現地で観察した技術的発展状況を考慮すると、難しいと言える。メキシコやホンジュラスなどのラテンアメリカ地域では、基本的な医療体制や医療技術が先進諸国と比べて遅れているので、今回の新型コロナウイルスの影響は予想以上に長引くことも予想され、このような事態を予測していなかった時期に作成した計画の大幅な変更が必要となっているのが現状である。今までに経験のない事態なので、どのような変更が有効なのか手探りの状態であり、進捗状況はやや遅れているが最善の方法を模索し遅れを取り戻す試みを実施している。
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Strategy for Future Research Activity |
現在そして今後の研究推進において重要なのは、研究対象地域のメキシコのベラクルス州南部および研究代表者の居住国ホンジュラスにおける社会活動の再開である。しかし、先の読めない状況で待つだけでは仕方がないので、できることをできる範囲で進めるべきである。本研究においても、現地で実際に行動を起こす必要のある作業もあるが、多くのことは現地の協力者と力を合わせてオンラインやリモートで実施及び進展させることが可能であろう。そのために現在進めている作業は以下の通りである。前回までの発掘データを基にした情報の整理。これは今回の発掘を実施する上でも、将来的な本研究テーマの発展を考慮した上でも重要なものであるので、詳細かつ迅速に行う必要があり現在進行中である。次に、パブリック考古学的活動として計画していたものを、可能な限りオンラインやリモートで実施可能なフォーマットに変更する必要が出てきたので、最善の方法を模索しつつ現在進行中である。実施する可能性のある活動としては、オンラインによる講演会、録画したビデオによる考古学的知識の普及活動、ヴァーチャル展覧会の実施などである。これらの活動は、該当地域の住民に対する観察及び意識調査を含んでいるので、それをどのようにして実施するのかが現在の大きな問題である。おそらく、この点に関してもインターネットを利用した解決策を模索している。これらの活動には、様々な技術的なあるいは機材的な充実が必要になる可能性があるので、再度、予算の使い道を再検討する。本研究は元来、様々な研究者やその他の関係者の協力を必要とするが、現在の状況は当初予測していた以上に彼らとの十分な連絡を取り合う必要性を増し、今後はコミュニケーションという部分でも充実を図る必要がある。
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Causes of Carryover |
当初2020年1月に計画していた発掘調査について、調査に参加する予定だったメキシコ人考古学者の日程の調整がつかなかったこと、現地の村人たちや役所との話し合いの結果、次年度に延期する必要が生じたために、そのために計上してあった人件費や機材費、そして発掘後の遺物整理作業の一部などを次年度に持ち越す必要ができた。本研究にとって発掘調査は実施する必要があるので、次年度内に実施する。翌年度分の助成金の使用計画はその大半がパブリック考古学活動に関わるものと、最終的な分析作業に使われるので、次年度分使用額は当初の予定通り発掘調査と一部の発掘遺物整理作業に使用されることになる。
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Research Products
(1 results)