2020 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
19K23150
|
Research Institution | Asahi University |
Principal Investigator |
小出 隼人 朝日大学, 法学部, 講師 (60844818)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 寄付 / 信託的譲渡 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日独の寄付の法的構成に関する学説を手がかりに、各学説がどのように寄付を評価して法的に構成しているかを明らかにし、それらの考察を踏まえて、寄付をどのような法的構成によって捉えるべきかという問題について検討するものであった。主な検討課題としては、日本法、ドイツ法における寄付の法的構成に関する学説の整理・分析であり、それらの検討結果をもとにこれまで日独における各学説がどのような寄付を考察対象にしていたのか、寄付をどのように評価して法的に捉えてきたのかを明らかにし、その各学説の論じている内容の適否を評価するという考察を行なった。 本研究では、これまでの先行研究が、義援金等にみられる寄付者、募集者、受益者の三者が関与する寄付を対象に検討を進めてきたことを確認した上で、学説の議論では、募集者の目的に従った寄付財産の処理義務、およびこれに対応する寄付者の請求権を基礎付けることに加えて、寄付財産については、募集者が破産した場合や、寄付財産が募集者の債権者から差押えを受けるおそれ等の寄付財産の処遇の問題が想定されており、それらに対応するためにも信託的譲渡説、信託法による構成が考えられてきたという分析を行なった。特に、寄付財産は公共的な性格、役割を担っており、破産、募集者の債権者からの差押え等から保護する必要性が高いと思われ、信託法による構成については支持できるとした。 また、日本法、ドイツ法の諸学説の中には、三者が関与する寄付以外の寄付の類型について言及するものがあり、寄付の類型に応じた議論がなされていることも確認できた。そして、これを参考にし、現代における寄付の類型を適切に把握して、寄付の類型に応じた法的構成について考察する方向性も見出した。 上記の研究については、法學84巻1号2号(「寄付の法的構成に関する一考察(1)(2・完)」75-136頁、29-105頁)にて公表。
|