2020 Fiscal Year Research-status Report
ヨーロッパにおける学生モビリティをめぐるガヴァナンスの様相
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19K23173
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| Research Institution | Osaka University |
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Principal Investigator |
小畑 理香 大阪大学, 人間科学研究科, 助教 (30850721)
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| Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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| Keywords | 高等教育 / フランス / ヨーロッパ / EU / ボローニャ・プロセス / 学生モビリティ / ヨーロッパ統合 |
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| Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、EUとボローニャ・プロセスという複数の枠組みが並存することで形作られる、高等教育分野における多元的かつ複合的なガヴァナンスの全体像を示し、その様相を実証的に解明することを目的としている。当初の研究計画では、高等教育分野の中でもヨーロッパ・レベルでの協力がもっとも進展してきた領域である国境を越える学生モビリティ促進に焦点を当て、この分野での協力全般を扱うつもりであったが、前年度の研究により、EUとボローニャ・プロセス双方の枠組みを通じて採択された高等教育における学習モビリティに関するベンチマーク（LMHE 2020）が、ヨーロッパ・レベルでの複数の枠組みの関係性を考察する上で格好の事例であることが判明したため、研究対象を同事例に絞ることとした。
2020年度はまず、前年度の研究成果をまとめた論文を、課題研究報告（査読なし）として『フランス教育学会紀要』に投稿した。ここでは、研究の第一段階としてLMHE 2020の策定過程を実証的に明らかにするとともに、これまで高等教育分野におけるヨーロッパ統合の進展を牽引してきた重要なアクターであるフランスがそこにどう関与したのかを検証している。
加えて2020年度は、前年度2月から3月にかけてパリとブリュッセルにおいて実施した聞き取り調査で得られたインタビュー記録および文書資料の整理と分析を行うとともに、EUおよびボローニャ・プロセスに関する政策文書を中心とする文献調査を継続した。それによって、LMHE2020をめぐる政策過程において、欧州委員会・参加国政府・高等教育機関の代表組織という各アクターがEUとボローニャ・プロセスそれぞれで果たした役割と関係性、さらには各枠組みにおける意思決定のあり方の特徴を明らかにした。以上の2020年度の研究成果については、2021年度中の公表を見据え、現在論文執筆に取り組んでいるところである。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度には、パリとブリュッセルにおいて現地調査を行い、フランス高等教育・研究・イノベーション省および欧州委員会、EUA等において前年度に実施したインタビュー協力者への聞き取りを継続するとともに、前回調査時にスケジュールの都合で実現できなかったインタビュー調査を追加で実施する予定であった。しかしながら、2020年度中は新型コロナウイルスの感染拡大により海外渡航がきわめて難しい状況にあり、年度内の海外調査は断念せざるを得なかった。
特に、ヨーロッパ・レベルでの高等教育機関代表組織であるEUAに対しては、前回調査時にはメールでの質問回答への協力は得られたものの、対面での聞き取り調査は実現できなかったため、2020年度の追加の調査に期待するところが大きかった。高等教育分野におけるヨーロッパ・レベルでの協力にとってステークホルダーとしてのEUAの役割は大きく、またEUとボローニャ・プロセスという異なる枠組み間の関係性を検討する上でも重要な組織であるため、2020年度中の現地調査が実現できなかったことで当初の研究計画にやや遅れが生じた。
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| Strategy for Future Research Activity |
2021年度は、実現可能であれば2020年度に実施を見送ったパリとブリュッセルでの現地調査を行いたいと考えているが、新型コロナウイルスの感染状況は今も変わらず深刻であり、2021年度中にあらためて現地調査を実施できるかどうかは、現時点では不透明である。そのため、現地調査が実現できない可能性も考慮に入れ、今年度はインターネット等を通じて日本からアクセス可能な一次文献の調査を集中的に進めることとする。前年度の研究の進捗状況の遅れの原因ともなったEUAに対する調査については、必要に応じてメールでの聞き取り調査を行うなど、代替手段を講じる予定である。
今年度は、本研究課題の最終年度であるため、これまでの研究の集大成をはかり、論文として研究成果の公表を行う予定である。これまでのLMHE2020をめぐる政策過程の分析により、学生モビリティ促進の領域においてEUとボローニャ・プロセスには共通するアクターが関与しているものの、それぞれの枠組みにおける各アクターの役割や関係性、そして意思決定のあり方には顕著な差異が見られることが明らかとなった。そこで、今後はこれらを整理した上で、LMHE2020の策定と実施に至る過程において、EUとボローニャ・プロセスがどのような関係にあったのかを、両枠組みに共通して参加するアクターとしての欧州委員会、EU加盟国、高等教育機関の代表組織（とりわけEUA）の動向に着目しながら検証していく。こうした両枠組みの相互作用を明らかにすることを通じて、最終的に学生モビリティ促進をめぐる多元的で複合的なガヴァナンスの様相の全体像の解明を試みる。
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| Causes of Carryover |
２０２０年度は、新型コロナウイルスの感染拡大により海外渡航がきわめて難しい状況となり、当初予定していたフランスとベルギーでの現地調査を断念したため、次年度使用額が発生した。延期した現地調査は、新型コロナウイルスの感染が収束し、現地での有意義な調査が可能と判断できる状況になり次第の実施を予定しており、その旅費として次年度使用額を充てる予定である。また、現地調査の延期により、本研究課題は今年度が最終年度となるため、研究成果の集大成および公表に伴う支出（物品購入）を予定している。
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Research Products
(2 results)
