2022 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
19K23223
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Research Institution | Shikoku University |
Principal Investigator |
稲倉 典子 四国大学, 経営情報学部, 准教授 (90845257)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2024-03-31
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Keywords | 価格指数 / 格差 / インフレ / 栄養 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、食料品の価格と栄養格差の関連性を明らかにすることである。格差について考察する際、(1)年齢や所得階層をはじめとする世帯属性間の格差、(2)居住する地域による格差、の双方から分析を進めてきた。本研究および関連する共同研究を通じ、これまでに以下の点が明らかになった。 (1) 世帯属性間の栄養格差:『家計調査』(総務省)、『小売物価統計調査』(総務省)から、世帯属性別に栄養摂取量(炭水化物、脂質、タンパク質、食物繊維、ビタミン、等)を推計した。年齢や所得をはじめとする世帯属性間で、栄養摂取量に有意な差があることが明らかになった。さらに、栄養素の取得価格にも、世帯属性間で相違がある点も確認された。 (2) 地域間の食料価格指数:47都道府県の食料品の年間平均価格をもとに、都道府県「間」の価格指数を推計した。食料価格指数については、都道府県間で顕著な違いは観察されないものの、指数算出間で無視できない違いが生じる点も明らかになった。 本年度は、上記(1)および(2)において、課題として残された点に取り組んだ。具体的には、『全国家計構造調査』(総務省)を分析に加え、都道府県別・所得階層別・月別の価格指数の推計を行った。得られた結果は以下の通りである。 昨今の物価上昇局面において、都道府県別にインフレ率が異なることは公的公表データから確認できる。また、総務省により所得階層別の価格指数が公表されているが、所得階層間でのインフレ率の差は非常に小さい。本研究では、所得階層間のインフレ率の差は、都道府県により大きく異なることを明らかにした。これは、実質値を算出する場面で価格指数を使用する際、地域と世帯属性要因を同時に考慮した指数を使用する必要性を強く示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は当初、健康格差の一因と考えられる栄養格差に関し、食物繊維を取り巻く地域間の市場構造の相違に着目してきた。すなわち、食物繊維の価格指数を推計し、同指数のレベルや分散の多寡が、当該地域における健康指標とどのような関連を持つか、を定量化することを研究計画として掲げていた。 ただし、研究を進めるにつれ、指数の算出方式自体の是非について、さらに考察を深めることの必要性が生じた。この点が、研究の進捗状況が「やや遅れている」原因であるが、栄養格差のより精緻な計測のために、必要不可欠な過程であると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の具体的なスケジュールは以下の通りである。 ①栄養素価格指数の推計方法を確定し、 ②研究実績で述べた(1)と(2)の結果を活用し、都道府県別・所得階層別・月別に食物繊維の栄養素価格指数を推計する。 ③外部の研究会で結果を報告し、論文を改訂し、投稿する。
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Causes of Carryover |
本年度は、海外の雑誌に投稿ができなかったため、次年度に投稿する際の英文校正費として繰り越しを行う。
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Research Products
(3 results)