2019 Fiscal Year Research-status Report
アフリカにおける住民参加型の開発実践下の地域社会と住民組織に関する総合的研究
Project/Area Number |
19K23267
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松隈 俊佑 京都大学, アフリカ地域研究資料センター, 特定研究員 (30844550)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 地域研究 / アフリカ / 社会開発 / 在来性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,途上国における住民参加型の開発実践について,地元住民が,外部から導入される知識や技能をどのように受け止めてこれに反応し,在来の知識や技術,社会組織をいかに再編しながら地域社会を発展させようとしているか,その社会動態を総合的に分析することを目的としている.日本の開発実践の現場で長期にわたるフィールドワークを行い,開発実践の前後で,在来知・技術の伝達,在来の社会組織の再編,外部環境の変化,について参与観察と聞き取り調査を実施する.近年のアフリカにおいては,開発現場のアクターやニーズが多様化しており,現場に即した開発事業の実践の重要性が増している.また持続可能な開発実践は現地への適合なしにはあり得ない.そこで,開発実践の現場がどのように事業を受け止めて反応しているか丁寧に調査分析する必要がある. 本年は,本研究の研究対象であるエチオピア共和国のアジスアベバおよびジンカに渡航して,本研究の根幹となるフィールドワークを実施した.フィールドワーク中は研究体制の構築と予備調査を行った.エチオピア道路公社,アジスアベバ科学技術大学,ジンカ大学,ジンカにある行政機関の関係者とネットワークを築き,日常的にデータ収集をできる関係を構築した.予備調査について,具体的には同国で開発実践に携わるエチオピア道路公社の職員から地方の市役所の役人,村役場の村長や村人を対象に,これまでの道路整備事業や,村の住民の自主的な道路整備について聞き取りをおこなった.また,村の住民の自主的な道路整備については実施現場の参与観察も実施して,映像を記録し資料を収得した.帰国後はこれらの予備調査から得られた情報を整理し,それをもとに調査項目の精査や構造的インタビューの構成を継続している.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一般に開発実践は設定した目標の実現を目指すが,それに付随してさまざまな社会変化を誘発する作用をもっている.そしてこうした社会動態を詳細に把握・分析した研究はごく少数にかぎられている.本研究は,開発実践が行われる村でフィールドワークを実施し,そのデータの分析をすることで社会動態の解明を目指す.まず在来の住民組織や行政組織を把握する.そして,過去に住民が経験した農道整備に関する聞き取り調査を行う.とくに,農道整備の技術・知識的側面,組織的側面,外部環境について,詳細に聞き取る計画としていた. 本年度は当初の計画どおり,まず予備調査の実施と今後の研究の円滑な実施のために必要なフィールドワークの現場での人間関係の形成をした.また,過去に実施した農道整備について,エチオピア道路公社,現地の役所の職員に聞き取り調査を実施した.多くの住民参加型の農道整備については,ケベレと呼ばれる行政区の最小単位の社会組織で実施されていることが明らかになった.また,実際に住民主体の農道整備を行っている現場の参与観察も実施した.専門家や技術者がいない村落部での農道整備をいかに実施するか,村長をはじめとして村の住民が試行錯誤している現場を観察した.次年度は収得したデータの整理・分析からはじめ,今後の研究活動へ展開できる研究活動が実施できた. 以上の点から研究はおおむね順調に進展していると自己評価する.
|
Strategy for Future Research Activity |
初年度は研究活動を円滑に推進する基盤を整え,予備調査も実施したため大きな問題点はないと考えている.しかし,現在の社会情勢を鑑みるに現地調査を即座に継続的に実施することは困難と思われる.現状況下で実施可能な調査やデータの取得方法を再検討する必要があると考えている.当面は収得済みのデータの整理・分析を進め,現地の研究者に協力を仰ぎデータの収得方法を探る.
|
Causes of Carryover |
当初はエチオピア共和国での現地調査渡航費として計上したものについて,調査の効率性を鑑みて当初の活動計画に支障が出ない範囲でその一部を次年度に延期することとした.この予算を利用して本年中に国内での研究会で報告等実施する予定を立てたが,今般の社会情勢の変化に伴い計画を再検討し,次年度に活動を延期することとした.
|