2020 Fiscal Year Annual Research Report
An empirical study on the transmission and acceptance of risk reports of the Fukushima Daiichi nuclear accident
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19K23273
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Research Institution | Otsuma Women's University |
Principal Investigator |
桶田 敦 大妻女子大学, 文学部, 教授 (50848504)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 原発事故 / テレビ報道 / 放射線リスク / 東日本大震災 / 情報の書き換え |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は「福島第一原発事故のリスク放送の伝達と受容に関する実証的研究」として行った。事故から9年となった2020年3月16日から18日の3日間、福島県、東京都、大阪府在住の20歳~69歳までの各1030人、計3090人に、インターネット調査会社のパネルを利用して、福島第一原発事故とその影響、福島の現在についての考えを調査した。 調査結果として、概ね「福島県民と東京都民や大阪府民とでは、福島の復興現状への理解や原発事故の影響評価について認識に差がある」とした仮説を支持する結果が得られた。一方、「福島県から離れるほど理解の差が大きくなる」とする仮説に対しては有意な差は得られなかった。 特に顕著な差があったのは、「原発事故からの復興」「放射能の影響で福島には人が住めない」「癌などの健康障害が起こる可能性」についての回答である。これらは、原発事故が起こった当初、メディアや一部研究者らを通じて、広く国民に流布されたものである。福島の復興過程は、福島県民はそこに在住しているものとして目の当たりにしているし、放射線による健康影響については、小児の甲状腺がんについては原発由来のものかについて未だ見解の統一がされていないものの、それ以外では世界中の研究者の調査により「影響はない」との結論が得られている。こうした福島県における現状についての認識を東京都民、大阪府民は十分に認識出来ていなかったことになる。 その理由として、福島の現状は福島県民以外には十分に伝えられていない(桶田2015、桶田2016)ことが上げられる。 結論として、これまで筆者が明らかにしてきたキー局による報道と福島ローカル報道の差が、結果として、福島県民以外は、原発事故に関する情報の書き換えが十分に行われていないことが今回の調査結果として裏付けられた。
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Research Products
(3 results)