2019 Fiscal Year Research-status Report
日本語学習者のためのノダ形式会話教材の開発に関する研究
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19K23331
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Research Institution | Fukui National College of Technology |
Principal Investigator |
市村 葉子 福井工業高等専門学校, 一般科目(人文系), 准教授 (00789373)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 日本語教育 / 日本語学習者 / ノダ形式 / イントネーション / 会話教材 |
Outline of Annual Research Achievements |
1.教材分析:初級から上級で使用されている総合教科書、会話教科書を用いて会話文におけるノダ形式(んです、んですが等)の使用実態を調査した。特に先行研究で母語話者に頻用されるとされた「んですけど」「んですか」「んですよ」「んですね」「んですよね」について、それぞれの用法別に最も自然だと思われる会話文を抽出した。 2.母語話者に対するアンケート調査(予備調査):抽出した会話文について、実際に母語話者がノダ形式を使用するかをアンケートにより調査した。調査は71名の協力を得た。その結果を基に、ノダ形式が有意に多く選択された会話文を取り出した。 3.母語話者、学習者に対する読み上げ実験(調査1):「2」で作成した会話文について、母語話者9名、学習者17名に対し、読み上げ実験を行った。また、読み上げ実験の後学習者に対し、ノダ形式についての学習や使用に関してインタビューを行ったところ、全員が「んです」は強調、やわらげの気持ちを表すこと、ノダ形式の使い方はよく分からないという回答を得た。読み上げ実験の結果、「んですね」「んですよね」「んですけど」について、母語話者と学習者に差がみられたため、さらに詳しい分析が必要と判断し、一部会話文を修正した。 4.母語話者に対する読み上げ実験(調査2):修正した会話文について、母語話者19名に対し読み上げ実験を行った。結果を分析した結果、用法によりイントネーションが異なる傾向が得られた。 以上、4つの調査を行い、学習者がノダ形式を使用する際に困難な点をある程度把握することができた。また、母語話者がノダ形式を使用する場面、用法に応じたイントネーションの傾向も記述することができた。ノダ形式は文末形式であるため、会話教材を開発する際には適切なイントネーションをも記述する必要がある。今年度実施した成果は、会話教材開発に大いに役立つと考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナウイルス感染拡大により、予定していた対面での読み上げ実験が中止、延期になったため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は以下3つの調査を行い、最終的に「4」を目指す。 1.調査2の継続:今後引き続き調査2を行う予定である。ただし、調査方法については、今後もコロナウィルスの感染拡大が懸念されるため、対面は困難と判断し、web上での調査に切り替える予定である。 2.印象度調査の実施(調査3):その後、調査1で得られた学習者の読み上げ実験データの中で、母語話者と異なるイントネーションが得られたものについて、できる限り正確に発音を復元し、会話データを作成する。その後、作成したデータを用いて、母語話者に対する印象度調査を行い、不自然と判断されたイントネーションを記述する。 3.会話における学習者のノダ形式困難点の記述(調査4): 国立国語研究所が作成した大規模会話コーパスを用いて、学習者にとって習得困難なノダ形式及びその用法を分析する。 4.各ノダ形式の用法別イントネーションの体系化: ノダ形式の会話教材の開発に寄与できるよう、全調査で得られた成果を基に各ノダ形式の用法とイントネーションの関係を体系的に記述する。なお、成果は随時関係学会で発表予定であり、すでにいくつかは応募中である。
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