2020 Fiscal Year Research-status Report
日本語学習者のためのノダ形式会話教材の開発に関する研究
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19K23331
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Research Institution | Fukui National College of Technology |
Principal Investigator |
市村 葉子 福井工業高等専門学校, 一般科目(人文系), 准教授 (00789373)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | ノダ / 文末音調 / 日本語教育文法 / 話し言葉 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. 19年度の調査結果に基づき,協力者とともに調査資料(会話文の読み上げ)を作成した.資料はターゲットのノダ形式(例:んですよね,んですけど)の文末音調を数種類(疑問上昇,アクセント上昇,上昇下降,平坦,下降)作成した.具体的には,「んですけど」2種,「んですよ」3種,「んですね」5種,「んですかね」3種である. 2.「1」で作成した資料を用いて,日本語母語話者30名に対し,適切さを評価させた.調査は話者による影響を排除するため,会話文は全て話者交替を行った.調査の結果,母語話者が自然と判断した音調,不快に感じる音調に傾向が見られた.成果を第11回日本語実用言語学会議,福井工業高等専門学校の研究紀要で発表した. 3.公開されている会話コーパスを調査し,ノダ形式の「そうなんですね」「んですかね」の分析を基に,近年の「ね」の伝達的機能の記述を試みた.具体的には,公開時の異なる複数の会話コーパスを用いた両複合形式の使用割合を比較した.調査の結果,情報受容場面において「そうなんですね」 の使用が「そうなんですか」を上回っていること,質問場面における「んですかね」の使用が微増していることを示した.本調査の結果を基に「ね」の伝達的機能を「聞き手と会話を維持する意図があることを聞き手に明示する」と結論付けた.成果は今年6月に学会誌に掲載予定である. 4.185名分の学習者会話データ(1名につき約30分)を調査し,ノダ形式の使用と口頭能力れるとの関係を記述した.具体的にはノダ形式の使用がなければ初級,ノダ形式は使用されるが,「んです」「んですけど」に偏っていれば中級のように大まかなレベル判定が可能とした.成果を第二言語習得学会国際年次大会で発表した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本語学習用の教材研究,および日本語母語話者の会話コーパス調査から,日本語会話で頻用されるノダ形式を精査した.その結果をもとに会話文の読み上げ実験や音声データを基に文末音調を体系化した. 作成した会話文録音データを用いた適正度調査から,各形式の文脈に即した音調及び不適切な音調についても体系的に示すことができた.さらに,ノダ形式のみならず文末に頻用される「ね」の伝達的機能,最近使用が急増している「そうなんですね」についてもその意味を記述することができた. 学習者データを用いた調査では,日本語学習レベルに応じたノダ形式の使用実態を記述した.これにより,どのようなノダ形式を使用するかで,学習者の口頭能力レベルがある程度把握できるという提案もできた.具体的には,ノダ形式が使用できなければ初級,「んです」「んですけど」類のみの使用であれば中級程度と言えるとした. 研究開始の予定はこの2年間で達成できた.よって,研究はおおむね順調に進展したと言える.
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はノダ形式会話教材開発のための基礎的研究と位置づけ,教材研究から各ノダ形式の発話意図,および文脈に応じた適切な使用音調も記述できた.さらに,ノダ形式の使用と口頭能力レベルの関係も記述できた.今後は科学研究費の新規採択を目指し,採択後は本研究の妥当戦を検証したうえでノダ形式の会話教材を作成し,公開したい.
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Causes of Carryover |
コロナ禍により協力者との打ち合わせや学会参加が当初の予定ほどできなかった.21年度も同様に出張は難しいと考え,オンラインで使用できる物品を購入したい.
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Research Products
(6 results)