2020 Fiscal Year Research-status Report
Road rage with egocentric bias: an interventional approach based on social cognitive theory
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19K23371
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Research Institution | Hokuriku Gakuin University |
Principal Investigator |
加藤 仁 北陸学院大学, 人間総合学部(社会学科), 講師 (30847356)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | あおり運転 / 自己中心性バイアス / ダークテトラッド / 怒り感情 / 社会的認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、自己を道徳的に正しいと認識してしまう自己中心性バイアスに着目し、自動車のあおり運転を誘発する運転者の怒り感情の生起メカニズムを解明するとともに、社会的認知理論の観点からあおり運転を抑制する介入的アプローチ方策を提案することである。従来、自動車運転時の怒り感情・あおり行為は運転者の攻撃性やそれを促進する車内環境の問題として社会心理学を中心に検討されてきたが、運転時の認知がもたらすあおり行為の抑制要因に関する実証的な研究は少ない。本研究では、自動車の運転という視覚的に自己中心性バイアスに陥りやすい環境が運転者の被害的認知を強める結果、怒り感情が生起するというモデルを立て、その妥当性を検証するとともに、あおり運転に結びつく自己中心性バイアスの抑制要因を検討する。 2020年度は、前年度に続いて次の2点について研究を進めた。(1)実験上であおり運転につながりうる状況を再現するための社会的認知の課題について、オンラインミーティングを通じて専門家との意見交換を行い、課題内容を検討した。(2)2019年度に作成した、交通場面における運転者の過失判断を測定するための過失判断課題の妥当性について引き続き検証を行い、車内環境を再現した実験への実装可能性を検討した。具体的には、2019年度に作成した課題に新規の交通場面を複数追加し、オンラインアンケートを通じて妥当性の検討および個人の認知バイアスの影響プロセスについて検討した。その結果、相手車両の運転手の意図を知覚している場合に他者への責任帰属がなされやすいことが明らかになったが、怒り感情の生起プロセスおよび自己中心性バイアスの影響については明確な結論は得られなかった。今後、(2)で作成した課題の妥当性のさらなる検討を進めるとともに、認知実験課題として実装しドライビングシミュレーターを導入した実験を進めていく予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の研究計画から、計画の遂行が遅れている。主な要因として、新型コロナウイルス感染症対策のために2019年度に引き続き国外の学会での情報収集および大学施設内における実験室実験の実施が困難になったことがあげられる。その結果、全体的な研究遂行スケジュールが後ろ倒しとなったために研究期間の1年延長を申請した。現時点では、研究1における交通場面の過失判断課題の作成および研究2における怒り感情の生起プロセスとパーソナリティの関連の検討を進めているが、一貫した結果が得られておらず、課題およびデータ分析の点で再考の余地がある状況である。2021年度にはこれらのデータ分析と再調査による妥当性・信頼性の確保を行った上で、ドライビングシミュレーターを導入した実験室実験を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、当初の計画通り、修正した課題を実装したオンラインアンケートを用い、あおり運転に繋がりうる交通状況における運転者の判断について再調査・分析を行い、過失判断と認知バイアスとの関連について詳細に検討する。また、実験室実験においてはドライビングシミュレーターを使用することで、現実の交通場面に近づけた環境で過失判断課題を実施し、オンライン調査の結果が再現されるかどうかについても検証する。さらに、調査および実験のそれぞれで個人のパーソナリティ特性の影響プロセスを同時に検討することで、あおり運転に繋がりうる運転者の特性および認知的判断について統合的に議論する予定である。
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Causes of Carryover |
2020年度に使用予定であった主な助成金のうち、旅費として計上していた国際学会(Society for Personality and Social Psychology/米国・オースティン,4泊6日)への参加は、コロナ禍の影響で見送ることとなった。次年度も国外へ渡航できる可能性は低いと見積もられるため、これらに計上していた予算を調査・実験費用(参加者への謝金)およびドライビングシミュレーター使用期間の延長に充当することで、研究内容の充実を図る予定である。
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