2021 Fiscal Year Research-status Report
高機能自閉スペクトラム症児の抑うつの予防に向けたSSTに関する基礎研究
Project/Area Number |
19K23383
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
中西 陽 奈良教育大学, 学校教育講座, 特任准教授 (30846845)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 自閉症スペクトラム障害 / 社会的スキル / 不適応行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
知的発達に遅れのない高機能自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)の子どもは,二次的な問題として抑うつ症状を抱えやすく,児童期から青年期にかけて悪化させやすいことが明らかにされてきた。本研究においては,ASD児の社会的スキルを高め,不適応行動を低減させることで抑うつ症状の悪化を予防することができると予測し,まずは基礎的な研究として①ASD児の社会的スキルの高さ,②不適応行動の少なさの2つの側面からASD児の行動を査定することができる尺度をそれぞれ開発し,多変量解析により抑うつ症状に対する予測について検討することを目的としている。2020年度までに①の尺度開発が終了し,②の尺度については内容的妥当性の検討を終えた暫定版尺度の作成ができた。2021年度は②の尺度の信頼性と妥当性の検討を目的とした質問紙調査を行った。対象者は一般群とASD群に向けて募集し,一般群は郵送調査により530名,ASD群は郵送調査と相談機関での募集により27名から回答が得られた。これら557名のデータに基づいて尺度の探索的因子分析を行ったところ,17項目3因子構造の尺度が妥当と考えられる結果が示された。また,この17項目においては高い内的整合性(α = .89)が示され,尺度としての信頼性が確認された。加えて,先に作成していた「社会的スキル尺度」との相関(r = -.56, p < .001)やASD群と一般群の得点の比較(t = -9.90, p < .001)からも十分な妥当性を有する尺度である可能性が示された。しかしながら,現時点ではASD群のデータ数が分析には不十分であると考えられることから2022年度も引き続きASD群のデータ収集を行い,60名に達した時点で再度尺度の信頼性,妥当性の検討,そして上記の抑うつ予測モデルの検証を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
2021年度は申請者の妊娠および出産に伴い,一時的に研究の実施継続が困難な時期があったため,当初の予定よりもASD群のデータ収集に時間がかかった。また,新型コロナウィルス感染拡大防止に十分な対策を取りながら研究を実施することが求められる状況が続いていることから,ASD群のデータ収集を行っている発達相談機関においても参加者の数が伸び悩んでいる状況にあった。年度当初は他機関でもASD群の参加者を募集できるように協力依頼を行うことも検討していたが,上記のような申請者個人と社会的な状況があったことから依頼を控えざるを得なかった。2022年度は相談機関利用者への参加依頼を継続しながら,新規に他機関への協力依頼を進めていく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
ASD児のアセスメントや支援の効果測定などに利用できる汎用性の高い尺度の開発,そして多変量解析による抑うつ症状の予測モデルの検討においては,やはり十分な数のデータに基づいた分析が欠かせないと考えられる。したがって,引き続きASD児のデータ収集に努め,当初の計画通り研究を進めていく予定である。しかしながら現在ASD群の参加者の募集方法に課題があると考えられるため,2022年度は上記の通り,他機関への協力依頼を行うことに加えて,現在募集を行っている相談機関のホームページに募集要項の掲載を行い,参加者の拡大を図りたいと考えている。
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Causes of Carryover |
前記の通り,当初の予定よりも研究参加者(ASD群)の募集に時間がかかっているため,参加者への謝礼として使用するクオカードの購入代金に充てる費用が残っている。また,調査会社を通して実施した郵送調査においても見積額と実際の委託費に差額が生じたため。残額は2022年度に繰越し,引き続き行う調査において参加者への謝礼(クオカード)に充てる予定である。
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