2022 Fiscal Year Annual Research Report
高機能自閉スペクトラム症児の抑うつの予防に向けたSSTに関する基礎研究
Project/Area Number |
19K23383
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Research Institution | Nara University of Education |
Principal Investigator |
中西 陽 奈良教育大学, 学校教育講座, 特任准教授 (30846845)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2023-03-31
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Keywords | 自閉スペクトラム症 / 社会的スキル / 不適応行動 / 抑うつ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、知的発達に遅れのない高機能自閉スペクトラム症(Autism Spectrum Disorder: ASD)の子どもの二次的な問題として生じる抑うつ症状について社会的スキルと不適応行動、そして友人関係の観点から発生プロセスに関する検討を行った。 2022年度は、前年度の調査に加えて新たに15名のASD児のデータを収集し、前年度の課題であったASD児の不適応行動を測定する尺度の再分析を行った。その結果、29項目3因子構造が妥当と考えられる結果が示された。専門家との協議により因子はそれぞれ「消極的・無関心」(α=.90)「自己中心的なルール遵守」(α=.86)「不自然なコミュニケーション」(α=.85)と命名し、各因子の内的整合性を検討したところ、3因子とも十分な値が得られた。各因子は社会的スキル(順に、r = .-.53, -.29, -.46, p < .01)、ASD特性(順にr =.55, .55, .77, p < .01)との有意な関連を示し、ASD児と定型発達児の得点の比較においても3因子ともASD児の得点が有意に高かった(順にt = -8.03, -6.97, -11.42, p < .001)ことから、構成概念妥当性についても十分であると考えられる結果が得られた。 続いて、572名(うちASD児42名)のデータに基づいて、これらの不適応行動が抑うつに及ぼす影響を想定したモデルについて共分散構造分析を用いて検討した結果、不適応行動尺度の3因子のうち「消極的・無関心」因子が、友人関係の低さを媒介して抑うつに影響を及ぼすことが示された(CFI=1.000, RMSEA= .000)。このモデルについては発達段階や性差を考慮したさらなる検討が課題であるが、「消極的・無関心」に含まれる不適応的行動の改善がASD児の抑うつの予防において重要であることが示された。
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