2019 Fiscal Year Research-status Report
Mathematical analysis of fluids with electrical effects
Project/Area Number |
19K23408
|
Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
梶原 直人 東京理科大学, 理工学部数学科, 助教 (40843131)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 自由境界問題 / 最大正則性理論 / 電気流体力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では, 電気流体力学に現れるTaylor-Melcherモデルの適切性を明らかにすることである. 自由境界問題である本研究において, その要となるのは線形理論としての最大正則性理論である. 一般に自由境界値問題を解く際に, 固定領域への変換を行うと準線形方程式が現れ, 最高階の微分の処理として, この最大正則性理論は従来有効な道具であることが示されてきた. この背景の中, 自由境界問題は境界条件に時間発展の方程式が現れ, 内部方程式も時間発展するものがほとんどであったが, 本方程式では内部が時間に依らない楕円型方程式(定常ストークス方程式)であることも一つの特徴である. そこで, この準定常問題の最大正則性理論についての理論を初年度の目標としていた. 結果として内部方程式は高階楕円型方程式を対象とする変更を行うことになったが, 望んでいた結果の準定常問題に対する最大LpLq正則性理論を得ることができた. 本結果は楕円型方程式のAgmon-Douglis-Nirenbergの結果や放物型方程式のDenk-Hieber-Pruessの結果のような線形理論として意義ある結果と考えている. 本結果は現在論文投稿中である. 一方で, 固定領域への変形で従来よく用いられてきた半澤変換の手法ではなく, ポテンシャル論によるアプローチを考えて研究計画としていたが, 本年度は文献調査やポテンシャル論の道具立ての準備に留まった. 二相流体の方程式をラプラス方程式の基本解や定常ストークス方程式の基本解を用いることで自由境界上の単独方程式へ帰着させるところまでは行ったが, ここからの計算に手が止まってしまった状態である. 現在はどのようにして高階部分と低階部分に分離でき, 最大正則性理論を用いるところまで持っていけるかを検討中である.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本来であれば, 二相流体の方程式である自由境界問題を境界上のみの方程式に帰着させた時点で線形部分と非線形部分がどう分かれるかを把握できると思ったのだが, 特異積分作用素であって, 合成積の形で書かれているので, その判断がつかない状況となってしまったため. また, 自由境界を固定領域に帰着させる場合, 多くは微分幾何学的な手法が用いられており, その準備を整えるのに時間がかかってしまっていることも要因である. 一方, 流体の方程式から高階楕円型方程式へ変更し, まず計算してみた. その準定常問題に対する最大正則性理論を得ることができ, これはこれで十分満足できる独立した結果であると考えている. これは今後別の研究にも役に立つものだと考えられ, 本研究においても, 有益であろうと期待している.
|
Strategy for Future Research Activity |
本来のTaylor-Melcherモデルは二相流体の方程式であったが, 曲面上の微分方程式とみなすことができたため, 原点に立ち返り, 曲率流方程式などの研究手法を学びつつ, 本研究へ考えを当てはめていく. また, 特異積分作用素であり, その解析にはフーリエ変換が一般に有効であるので, その理論, 特に擬微分作用素の理論から主要項となるべき部分を明らかにしていく. 物理背景の電気流体力学の知識も不足しているので, 数学者のみならず, 物理学者等との議論も重ね, 自らの研究の糧としていこうと考えている.
|
Causes of Carryover |
次年度使用額として6万円ほど残ったが, 図書購入が間に合わなかったためである. 次年度に再度図書費に当てる予定である.
|