2019 Fiscal Year Research-status Report
Magnetic spin Hall effect in Weyl antiferromagnet
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19K23423
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
水野 隼翔 東京大学, 物性研究所, 特任研究員 (30846499)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ワイル反強磁性体 / スピンホール効果 / 磁気スピンホール効果 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子のもつ電荷とスピンの二つの自由度を利用するスピントロニクス分野において、角運動量の流れであるスピン流の制御は重要課題の一つである。これまで主に、電流とスピン流との変換現象であるスピンホール効果がスピン流の電気的な生成・検出手段として用いられ、Ptなどの非磁性重金属が幅広く使われてきた。一方近年、ワイル反強磁性体と呼ばれる物質に電流を印加した際に、物質表面に生じるスピン蓄積ベクトルの向きが外部磁場によって変化するという磁気スピンホール効果が発見され、磁気的な秩序とスピンホール効果との相関に注目が集まっている。しかし、その詳細な関係は実験的に明らかにされていない。そこで、本研究課題では、ワイル反強磁性体の表面近傍に現れるスピン蓄積ベクトルが、同磁性体のスピン配列の変化に対してどのように応答するかを測定することにより、ワイル反強磁性体における磁気スピンホール効果の解明に取り組んでいる。 本年度はまず初めに、スピンホール効果を簡易的に検出できる素子の作製を行った。同効果を発現することが既に知られているPtと、強磁性体であるCoFe合金をサブミクロンスケールのT字型素子へと加工した。強磁性体からPtへスピン偏極電流を注入し、スピンホール効果及びその逆効果による信号が検出できることを確認した。 次に、同素子構造をワイル反強磁性金属であるMn3Sn合金に適用すべく、微細加工の条件出しを行った。Mn3Sn薄膜はサブミクロンスケールに加工した際に、酸化による電気抵抗率の上昇や磁気特性の劣化等が懸念されている。そこで本年度は、薄膜作製後のArイオンミリング法による加工と、絶縁層の積層によって表面及び側面からの酸化を防ぐことにより、加工前と同等の電気抵抗率及び異常ホール抵抗率を示すことを確かめた。以上により、Mn3Snにおけるスピン蓄積を検出するための測定手法・加工手法が整った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、ワイル反強磁性体における磁気スピンホール効果の原理を実験的に解明することである。本年度は、スピンホール効果を発現することが既に知られているPtを利用してT字型素子を試作し、スピン蓄積の検出が可能であることを確かめた。また、Mn3Snの微細加工における条件出しを行い、バルクの磁気特性を保った状態でサブミクロンスケールに加工することに成功した。以上の結果から、Mn3Snのスピン蓄積を測定する土台を整えた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の結果を踏まえ、次年度はMn3Sn/強磁性金属のT字型素子を作製し、Mn3Snのスピンホール効果測定を行う。また、Mn3Sn層へのシャント電流の影響も考慮して、電流を伴わない非局所スピンバルブ構造による測定も試みる。スピンホール効果を検出した後に、膜面直に磁化した強磁性体を上記の構造に用いて磁気スピンホール効果の測定を行う。
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