2019 Fiscal Year Research-status Report
次世代小径ステント用TRIP/TWIP Co-Cr合金の開発
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19K23580
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Research Institution | Kindai University |
Principal Investigator |
植木 洸輔 近畿大学, 理工学部, 助教 (10845928)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | Co-20Cr-15W-10Ni合金 / 晶・析出物 / 電解抽出法 / 熱間鍛造 / 冷間圧延 / 加工性 |
Outline of Annual Research Achievements |
1. ASTM F90に規格されている生体用Co-20Cr-15W-10Ni合金をベースとして、Mn, Siを添加したCo-20Cr-15W-10Ni-xMn-ySi合金(x =4, 6, y = 0, 0.5, mass%)を作製した。鋳造まま材(as-cast材)および熱間鍛造材(as-forged材)に対し、組織観察および晶・析出物相分析を行うことで、Co-Cr-W-Ni合金におけるMn, Si添加が溶融・鍛造プロセス中に形成される晶・析出物相に与える影響を明らかにした。過去の研究から、Co-20Cr-15W-10Ni合金において熱間鍛造後に確認される主な析出物は、M23X6型、η相(M6X-M12X型, M: 金属元素、X: C and/or N)であったが、MnおよびSiを添加することで、M23X6型析出物の形成が抑制された一方で、η相の形成が促進された。さらに、Si添加量の増加とともに析出物量も増加していたことから、Co-Cr-W-Ni合金において、Siは析出物形成を促進すると考えられる。 2. As-forged材に対して溶体化処理条件の検討を行った。1473 Kにて7.2 ks熱処理を施した試料においては析出物が残留したが、1573 Kにて7.2 ks熱処理を施すことで、すべての合金組成において析出物の完全な溶体化が確認された(ST材)。ST材に対して冷間圧延を行い、冷間圧延材(CR材)を作製した。Co-20Cr-15W-10Ni-4Mn-0Si材の限界圧延率は、約60%であった。Co-20Cr-15W-10Ni合金の限界圧延率が約58%であったことから、少なくともMn添加による塑性変形能の低下は確認されず、既存の規格合金と同等の加工性を有していると考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.Co-20Cr-15W-10Ni合金(mass%)にMnおよびSiを添加することで、Co-20Cr-15W-10Ni-xMn-ySi(x = 4, 6, y = 0, 0.5, mass%)の計4種類の合金を溶製した(as-cast材)。 2. As-cast材に対して1473 Kにて熱間鍛造を行った(as-forged材)。As-cast材およびas-forged材の両方からη相が確認された。As-forged材においては、Si添加による析出物量の増加が確認された。このことから、Co-Cr-W-Ni合金におけるSi添加は析出物形成を促進すると考えられる。 3. As-forged材に対して晶・析出物の溶体化を試みた。1573 Kにて7.2 ks熱処理を施した試料においては、Mn, Si添加量にかかわらず、晶・析出物が完全に溶体化していた(ST材)。ST材の結晶粒径は、合金組成にかかわらず300 μm程度まで粗大化していた。 4. ST材に対して冷間加工を施した。現在、Co-20Cr-15W-10Ni-4Mn-0Si(mass%)のみ圧延率50%の条件にて冷間圧延を施した試料の作製が完了している。Co-20Cr-15W-10Ni合金(mass%)の限界圧延率が約58%であったのに対し、Co-20Cr-15W-10Ni-4Mn-0Si(mass%)の限界圧延率が約60%であったことから、Mn添加後も規格合金と同等の塑性変形能を有していると考えられる。 5. 規格合金であるCo-20Cr-15W-10Ni合金(mass%)に対して、冷間圧延および再結晶化熱処理を施すことで、圧延率30, 50%の再結晶化熱処理条件の検討を行った。平均結晶粒径が20 μm程度の試料を作製することができ、今後研究を遂行する際に参考となるデータを獲得することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1. すべてのST材に対して圧延率50%の条件にて冷間圧延を施したのち、静的再結晶による結晶粒微細化を目的とした再結晶化熱処理を行う。再結晶化熱処理は、過去の研究データから、1473 Kにて120 ~ 180 sの条件で行う。バルーン拡張型ステントとしての応用を考慮し、目標平均結晶粒径は15 ~25 μm程度とした。再結晶化熱処理後の試料に対しては、as-cast材、as-forged材と同様に微細組織観察および電解抽出法を用いた晶・析出物分析を行い、再結晶化熱処理に伴う晶・析出物形成挙動を調査する。 2. ST材、再結晶化熱処理材(recrystallized材)の機械的特性を引張試験および硬さ試験により調査する。引張試験は、板状引張試験片を用いて行う。板状引張試験片は、再結晶化熱処理後の試料から放電加工により切り出す。引張試験片の切り出しと併せて、硬さ試験用試料の切り出しも行う。 3. 引張試験後の破断試料に対して、XRDによる母相の相同定を行い、塑性変形による歪み誘起マルテンサイト変態発生の有無を調査する。破断試料においてマルテンサイト相が確認された場合には、破断する前に引張試験を中断することで、歪みを導入した試料を作製し、塑性変形中の歪み誘起マルテンサイト変態発生挙動を明らかにする。 4. 1~3で得られたデータから、Co-Cr-W-Ni合金におけるMn, Si添加が機械的特性に与える影響を、塑性変形中の加工硬化挙動および歪み誘起マルテンサイト変態発生挙動の観点から考察することで、次世代小径ステント用高性能Co-Cr合金開発の基盤を構築する。
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Research Products
(2 results)