2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K23582
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
片所 優宇美 国立研究開発法人産業技術総合研究所, エネルギー・環境領域, 研究員 (50849841)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ホウ素 / 溶融塩電解 / 電解還元挙動 |
Outline of Annual Research Achievements |
1123K、NaCl-CaCl2-CaO浴中におけるB2O3の電解還元挙動を明らかにした。塩化物浴にCaOを添加することにより、B2O3(2.0mol%)を溶解させた。溶解に関しては、ICP-AES測定により全量溶解を確認した。4種の電位(1.1V、0.9V、0.6V、0.3V vs. Li+/Li)において、Mo、Ni電極上のホウ素の挙動を調べた。その結果、Mo電極では、Mo-B化合物およびCaB6が生成した。一方、Ni電極では、すべての電位でNi-B化合物が生成し、0.6VでのみCaB6の生成が確認された。SEM観察から、CaB6は、立方体状の形をしており、既存の報告と一致していた。また、CaOを添加したことにより、アノードで発生したCO2が浴に溶解しやすくなったことから、カソードにおける炭素析出が生じた。以上より、CaB6の生成、基板との合金化、炭素析出等の原因により、本実験系では純度の高いホウ素を得ることが難しいということが分かった。 上記の成果に関しては、擬似参照極を用いたことや、大気中の水分の影響を受けている可能性があり、挙動の再現性を確認する必要がある。来年度は、上記実験の再現性を確認するとともに、GB付電気炉にて実験を行い、再現性の高い実験を実現する。また、ホウ素化合物を作らないAg基板等を用い、Caの入っていない浴(KF-KCl-KBF4浴、LiCl-KCl)における挙動を調べる予定である。これにより、純度の高いホウ素が得られるかどうか、検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
純度の高いホウ素を得ることができなかったが、分析や電気化学測定により原因の解明ができた。また、ホウ素の挙動やNi、Mo等と合金化する電位等の電気化学挙動についての情報を得ることができた。CaCl2ベース浴については、CaB6が溶融塩中のCa2+と添加したホウ素源から生成し、単体ホウ素を得ることができないという致命的な欠点があることが分かった。本来の目的である高純度単体ホウ素は得られていないが、実験データや禁忌元素の特定ができており、進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
Caの入っていない溶融塩組成におけるホウ素の挙動について調べ、新たな単体ホウ素合成法として有効であるかどうかを調べる。具体的には、KF-KCl浴、LiCl-KCl等を検討する。
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Causes of Carryover |
溶融塩に使用する試薬は、大気中の水分を吸収し、劣化しやすい。そのため、必要な実験分をその都度購入するようにしている。そのため、次年度使用額が生じた。また、コロナウイルスの影響で、年度末の学会が中止となった。繰越額が少ないため、電極材料や試薬、実験装置の部品等の消耗品として使用する予定である。
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