2019 Fiscal Year Research-status Report
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19K23659
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
湯澤 賢 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 特任助教 (20843890)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ポリケチド合成酵素 / 小角X線散乱法 / クライオ電子顕微鏡 |
Outline of Annual Research Achievements |
モジュラーポリケチド合成酵素(モジュラーPKS)が触媒する各反応における触媒ドメインの空間的位置関係や相互作用界面を決定することはモジュラーPKSの機能改変に不可欠であり、X線結晶構造解析、小角X線散乱法(SAXS)による構造解析、さらに最近ではクライオ電顕顕微鏡(電顕)を利用した単粒子構造解析など、様々な方法が試みられている。しかしながら、モジュラーPKSは多数のタンパク質ドメインからなる巨大な酵素であるため、これら手法を用いた解析が難しく、未だに広く受け入れられる反応モデルの提示には至っていない。そこで、本研究課題ではこれまで利用されていない生化学的な手法でこの課題の解決に取り組むことを目的としている。本研究計画提出時には記載していなかったが、この新手法とこれまでの手法を比較検討するため、2019年度は、本研究で扱うモデルPKSのSAXS解析、ネガティブ染色法による電顕解析、クライオ電顕解析を行うことにした。SAXS解析の結果、このPKSがホモダイマーを形成することが明らかとなった。また、興味深いことに、2014年にNature誌に発表されたクライオ電顕解析の結果とは、異なる構造であることを示唆する解析結果となった。また、条件を最適化することで、ネガティブ染色法による電顕解析にも成功し、ダイマーに相当する目的の大きさの粒子が確認された。さらには、クライオ電顕解析でも目的の大きさの粒子を確認することに成功している。しかしながら、クライオ電顕解析では目的の大きさの粒子に加え、まだら模様の何かが見えており、次の画像解析のステップに進むためにはこの未知の物質・構造体を取り除かなければならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究計画を変更し、本研究で扱うモデルPKSのSAXS解析、ネガティブ染色法による電顕解析、クライオ電顕解析を行ったため、本研究計画で提案した生化学的な手法による構造解析に関しては結果が得られていない。一方で、クライオ電顕解析によって提唱されたPKSのモデル構造が正確ではない可能性があると研究計画書で指摘したが、それを実際に示唆するデータがSAXS解析により得られたことは非常に興味深く、この分野の今後の伸展に大きな影響を与えると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
モジュラーPKSの構造は様々な方法により解析されているが、その構造や反応モデルに関して広く受け入れられるような結論は出ていない。実際に、本研究で扱うモデルPKSのSAXS解析の結果は、以前のクライオ電顕解析とは異なる結果となりそうである。この点は非常に興味深く、論文発表に向けて今後も解析を進めていきたい。また、同様の結果を他の解析手法でも示すことも重要であると考えている。したがって、クライオ電顕解析や本研究計画で提案した新手法による構造解析も進め、信頼できるモジュラーPKSの構造や反応モデルを世界に先駆けて提示したい。
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Causes of Carryover |
研究計画を変更し、本研究計画で提案した生化学的な手法による構造解析に関して予定通りに研究が進まなかったため。
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