2019 Fiscal Year Research-status Report
キノコシロアリを模倣したオオシロアリタケ栽培化への挑戦
Project/Area Number |
19K23686
|
Research Institution | University of Miyazaki |
Principal Investigator |
原田 栄津子 (石井栄津子) 宮崎大学, 農学部, 助教 (00576514)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | オオシロアリタケ / キノコシロアリ / 菌薗 / 絶対的相利共生 / 培養特性 |
Outline of Annual Research Achievements |
アジアやアフリカに自生し濃厚な旨味を持つ高級食材である亜熱帯性食用担子菌オオシロアリタケ属菌(Termitomyces sp)は、昆虫のパートナーとなり生活環を維持している共生菌であり、近年、生理活性化合物の学術報告が相次いて発表されている注目の薬食用きのこである。この独自に進化した生態系を持ち、且つ創薬の可能性も兼ね備えたオオシロアリタケ属菌研究の最初のステップとして、本研究では菌薗や子実体を採取し、キノコシロアリの生態や環境を模倣することにより培養特性や子実体形成因子の解明など菌類生理学的アプローチを行う。最終的な目標とする世界初の人工栽培化であり、この検討により、きのこと昆虫の絶対的相利共生の謎に迫る。また、散在するオオシロアリタケの薬理効果と種レベルでの遺伝的類縁関係を整理することで機能性研究の基盤を形成する。 1)石垣島や西表島しか発生しないことから子実体の採取が困難だが、60種もの子実体を採取し純粋分離することができたことから、本研究の大変重要な最初のステップを達成した。得られた菌株を使用し培地基材や培養方法の検討を行い、オオシロアリタケ菌糸の固形培地および液体培地における特性が解明できた。 2)オオシロアリタケ菌株を培養することで、次のステップで用いる菌糸体培養物が準備できた。 3)2)で得られたサンプルの評価系として抗ウィルス作用や抗ガン作用など、オオシロアリタケの機能性評価が行える基盤を構築できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究でターゲットとするのは、シロアリと共生関係を維持している種オオシロアリタケである。オオシロアリタケ属菌は、共生パートナーであるキノコシロアリの巣から発生し、日本では石垣島や西表島のみで発生が確認されている種である。本研究の最も重要な課題であった菌株を60菌株も純粋分離し、最適な培地に培養し培養試験に用いることができた点に関して、予想以上の結果が得られた。さらに、抗ウィルス作用や抗ガン作用など、オオシロアリタケの機能性評価が行える基盤を構築できた。それらの点に関しては、順調に進展している。ただし、菌糸体を確保することはできたが、キノコシロアリの菌薗を採取することができなかったことから、菌薗の特性解析やキノコシロアリの生態や環境を考察することまで進んでいない。その他、栄養成長と生殖成長の切り替えスイッチの科学的検討など、子実体形成メカニズム解明への課題に関しては、来年度の研究になった。 また、新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、海外に行くことができない情勢であることから、海外での種の多様性解析(ガーナ、約10種など)、民間療法の把握、データベースの作成が不可能であった。
|
Strategy for Future Research Activity |
1)本年度は、きのこシロアリの菌薗を採取することで、キノコシロアリがオオシロアリタケの生育を制御するのではないかという課題に対する研究を進行する。得られた菌薗の成分分析を行うことで、キノコシロアリが供与するものを探り当てオオシロアリタケ菌糸の培養特性を解明する。石垣島のオオシロアリタケは、年初の台風が通りすぎた後、数日~1週間程度で菌薗から地上に子実体を発生することから、6月からがオオシロアリタケの発生シーズンになる。以上の事を考慮し、この時期に昨年度調査済みのオオシロアリタケ発生地の調査と菌薗の採取を実施する。 2)得られた菌薗サンプルの特性解析を行い、菌薗外で子実体を形成させる手段はないのかという課題を進行する。キノコシロアリが供与するものを探り当てオオシロアリタケ菌糸の培養特性を解明する。 3)上記にて得られた成果を基に、キノコシロアリの生態や環境を考察することで、栄養成長と生殖成長の切り替えスイッチが何かを科学的に検討し、子実体形成メカニズム解明へのヒントを得る。 4)石垣以外でも、この種のオオシロアリタケは、アジアやアフリカに自生している。しかしながら、ほとんど種の解析が行われていないこともあり、海外での調査を計画していたが、現状新型コロナウィルスの感染拡大の影響を受け、海外の調査研究を変更し、本種を研究している海外の研究者とコンタクトを取り合い、種の多様性解析(ガーナ、タイなどのオオシロアリタケ種)、民間療法の把握、データベースの作成などの課題を遂行する。 5)オオシロアリタケ液体培養で得られた抽出物の機能性評価を行う。
|
Causes of Carryover |
国内外に散在するオオシロアリタケ子実体および菌薗の採取する予定で、採取場所として石垣島、西表島、タイ、ガーナを予定していたが、コロナウィルス感染拡大防止の影響にて、石垣島への採取回数が少なく、海外への採取も不可能になったことから旅費が計上されていない。また、それに伴い、現地を案内してくれる森林組合などの人件費も計上されていない。さらに、英語論文についての校正費は今年度末までに投稿準備が完了しなかったため,計上しなかった。 オオシロアリタケとキノコシロアリの絶対的相利共生関係など生態的な特徴を観察する目的で、子実体や菌薗のサンプルを組織成分分析や微生物群集解析を行う。それらの経費を支出予定である。また,現在準備中の英語論文の英文校正費に支出予定である。また,国内外の学会参加費も支出予定である。
|