2019 Fiscal Year Research-status Report
細胞分化に寄与する構成的ヘテロクロマチン関連因子の同定とその分子機構の解明
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19K23724
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西淵 剛平 京都大学, ウイルス・再生医科学研究所, 助教 (50846508)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ヘテロクロマチン / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
真核生物のゲノムDNAはヒストン八量体に巻き付いたクロマチン構造を形成しており、核内にコンパクトに収納されている。活性化した遺伝子領域ではクロマチン構造が緩むことが知られており、遺伝子発現と密接に関わっている。一方で、転写が行われない領域や繰り返し配列で構成されるゲノム領域はクロマチン構造がきつく、抑制的なクロマチン構造を形成している。このような抑制的なクロマチン構造をヘテロクロマチンと呼び、その構築に関わるエピジェネティックな分子機構について、数多くの研究が行われてきた。特に細胞の分化や発生を通して、安定的に保たれるヘテロクロマチン構造は構成的ヘテロクロマチンと呼ばれており、ヒストンH3の9番目のリジン残基のメチル化が主要な役割を果たしている。しかしながら、近年の研究によりその構成的ヘテロクロマチン領域も完全に均一なものではなく、その種類や細胞の分化レベルに応じて制御機構が異なることがわかっている。 本研究ではそのような分化時におけるヘテロクロマチン構造の変化や部位特異的なヘテロクロマチン構造の形成機構について分子レベルで明らかとすることを最終目標とし、研究を行う。そのためにヘテロクロマチンの主要な構成因子であるHP1ファミリータンパク質の相互作用因子の探索を未分化な細胞と分化した細胞で行う。また、同定された時期特異的な構成因子を細胞分化の時期特異的なタイミングで遺伝子機能を欠失する実験系を構築し、細胞の分化やクロマチン構造の変化にどの様に寄与するか検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
未分化な細胞でのHP1の相互作用因子について解析を行い、多くの既知の因子を同定することができた。しかしながら使用していた過剰発現系では細胞の増殖が抑制されたため、発現コンストラクトの再検討が必要になった。それに加えて時期特異的な遺伝子機能の欠失についてもその様な二次的な影響を排除する実験系が必要となった。また現状の相互作用因子解析や部位特異的なゲノム領域の結合因子の探索には当初想定していたよりも多くの細胞が必要であることがわかり、分化後の細胞で実施に至ることができなかった。現在、以下の今後の研究の推進方策の項に示すように、実験系の再構築を行なっているところであるが完成には至っていないため、現在までの進捗状況について『やや遅れている』とした。
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Strategy for Future Research Activity |
まず発現系については自身が過去に使用していたレンチウイルスによるコンストラクトを利用することにした。また、時期特異的な遺伝子機能の欠失にはオーキシン誘導型のノックダウンシステムであるオーキシンデグロン法(AID system)を導入することにした。部位特異的なゲノム領域の結合因子の探索には、Cas9のヌクレアーゼ機能を欠失したdCas9を用いた実験系を応用することにした。いずれの実験系も自身や所属する研究室において基礎的な技術が出来上がっているため、本年度中に研究目的に記載した研究の実施に取り掛かることができると考えている。
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Causes of Carryover |
年度後半途中(1月)に所属を変更したため、研究費使用(研究実施)の遅れが生じた。それに付随して研究計画の後半に予定していた質量分析による解析などを外注する必然性が生じ、コストの増加を考慮し次年度に使用する枠を増やした。また新型コロナウイルスに関連する措置により、出張を自粛し旅費の使用が無くなったことも一因である。
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