2020 Fiscal Year Annual Research Report
ルーティン行動と状況依存的行動を制御する大脳基底核回路の解明
Project/Area Number |
19K23778
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
網田 英敏 京都大学, 霊長類研究所, 特定助教 (80845321)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 神経科学 / 大脳基底核 / ペリニューロナルネット / ルーティン / 霊長類 / スキル / タッチパネル / コンドロイチナーゼ |
Outline of Annual Research Achievements |
視覚探索スキルを担う大脳基底核・黒質外側部に局在するペリニューロナルネット(PNNs)の役割を明らかにするため、PNNsを分解する薬剤(コンドロイチナーゼABC)を黒質外側部の両側に注入し、「図形-報酬」連合学習への影響を調べた。 マカクザルに対し、タッチパネル上に表示される2つの図形をタッチして選ばせる行動課題を用いた。この行動課題では、一方の図形は正解図形で、タッチすると報酬(卵ボーロ)が得られた。もう一方の図形は不正解図形で、タッチしても報酬は得られなかった。サルは報酬の有無によって正解図形を学習した。1セッションで8組の異なる図形ペアを用意し、これら図形ペアをランダムに50試行提示した。50試行のうち正解図形を選択した試行数を正答率とし、3週間継続して正答率の推移を調べた。生理食塩水注入後におこなった課題の成績(コントロール)と薬剤注入後におこなった課題成績を比較して薬剤注入の効果を検討した。 その結果、薬剤注入条件では、「図形-報酬」連合学習の習得に、より長い期間を要した。とくに、学習開始から3日目の間に、顕著な学習障害が生じた。このことは、PNNsが「図形-報酬」連合記憶形成に関与していることを示唆する。一方で、薬剤注入前に学習済みだった「図形-報酬」連合記憶については薬剤注入後も90%の正答率で正解図形を選ぶことができた。この成績は、生理食塩水注入条件と有意な差は見られなかった。このことから、PNNsは記憶保持自体には関与していないことが示唆される。 以上の結果は、霊長類脳において大脳基底核のPNNsがルーティン行動の形成に必要な物質的基盤であることを示唆しており、長期記憶形成メカニズムを解明する足がかりになるだろう。
|
Research Products
(4 results)