2019 Fiscal Year Research-status Report
潰瘍性大腸炎を発症/悪化させる特定細菌の病原因子の探索と治療・予防法の確立
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19K23853
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Research Institution | Aichi Gakuin University |
Principal Investigator |
久綱 僚 愛知学院大学, 薬学部, 助教 (00845810)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 細胞内侵入性 / 炎症活性 / 菌体成分 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、我々が独自に見出したP. bifermentans subsp. muricolitidis PAGU 1678Tの潰瘍性大腸炎(UC)モデルマウスに対する病態悪化因子の解明を目的としている。今回、より単純な実験系として培養細胞を使用し、PAGU 1678Tの細胞周囲での挙動を検証した。 培養後のコロニー数から細胞付着数を比較したところ、マウス病態軽減能が示されているC. butyricum PAGU 1417Tとの有意差は認められなかった。しかし、Real time qPCR解析および蛍光顕微鏡観察より、細胞内にはPAGU 1417Tに比してPAGU 1678Tが数多く存在することが明らかとなった。また、マウス大腸炎誘発剤(DSS)を培地へ添加することで、PAGU 1678Tの侵入性は非添加時の2.5倍に増大することを見出した。さらに、細胞内IL-6やIL-8発現量は、DSS単独処理やDSS+PAGU 1417T処理時よりもDSS+PAGU 1678T処理時に有意に増大することが示された。一方で、PAGU 1678T死菌を処理した際にも炎症応答が認められたことから、本活性はPAGU 1678Tの菌体成分に由来するものであると示唆された。そこで、全菌体タンパク質のSDS-PAGEを実施したところ、PAGU 1678Tに特徴的な成分を有することが明らかとなった。 本研究にて培養細胞を用いたことで、PAGU 1678Tは他の腸内共生細菌に影響を与えるのではなく、大腸炎に直接影響していることが明らかとなり、炎症状態では細胞内侵入能が増大して大腸炎悪化に寄与している可能性を見出した。残りの期間にてPAGU 1678Tに特徴的な菌体成分を明らかにし、これを保有する腸内細菌群の存在の把握、さらには当該因子の機能制御を行うことでUC治療および予防法の確立に繋げられると考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、Paraclostridium bifermentans subsp. muricolitidis PAGU 1678Tにおける潰瘍性大腸炎モデルマウス病態悪化因子の探索を目的としている。これまでに、DSS(デキストラン硫酸ナトリウム)存在下における炎症状態下において、PAGU 1678Tの細胞内侵入能は増大し、単独での細胞内炎症活性を示すことを証明した。また、全菌体タンパク質を用いたSDS-PAGEからは、PAGU 1678T に特徴的な菌体成分の存在を明らかにしている。これらの結果は、PAGU 1678Tの菌体成分が大腸炎発症時における細胞炎症部位に作用し、大腸炎の重症化に寄与している可能性を示唆している。当該因子の同定解析にも既に着手しており、現在の進捗状況としてはおおむね順調に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
SDS-PAGEから得られたPAGU 1678T に特異的な泳動バンドの切り出しを行い、タンパク質の抽出、消化後にLC/MSを用いて当該成分の同定を試みる。バンドから得られるタンパク質量は極めて少量であることが予想され、LC/MSにてスペクトルが得られない場合には、SDS-PAGEにおいて泳動レーンを増やして切り出すバンド数を増やす、また、キットを用いたタンパク質の濃縮、精製なども考慮する。成分が同定された際には、当該成分を保有する腸内細菌群の存在を把握することで、それら細菌群に特異的な抗菌薬の探索を行い、また、当該因子の機能を制御することで大腸炎治療や予防法の確立に繋げていきたい。
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Causes of Carryover |
交付決定時において、ここまでの研究に必要となる研究環境が整っており、すぐに研究を開始できる状況にあったため。次年度は、今後の菌体成分分析にて使用するLC/MS解析にて必要となる試薬類の購入や、学会発表における旅費に使用したいと考えている。
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Research Products
(1 results)