2019 Fiscal Year Research-status Report
生体分解性足場を用いた組織工学的手法と赤色LEDによる新たな腸管再生法の開発
Project/Area Number |
19K24014
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
吉川 雅登 徳島大学, 病院, 医員 (60737097)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 短腸症候群 / 腸管再生 / 腸管オルガノイド / 赤色LED / 脂肪由来幹細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
短腸症候群の根治的治療確立を目指した腸管再生に関する再生医療研究が進んでいる。我々はこれまでに、シリコンチューブをscaffold(足場)とした腸管再生モデルを作成し、三次元的腸管再生を可能とした。さらにその再生速度を上げるために脂肪組織由来幹細胞(ADSC)を新生した線維被膜内に移植することで、再生速度を速めるという結果を得たが、再生は不安定で、全層性の腸管再生には8週間と長期間を有すること、またシリコンの抜去に再開腹を要し、腸管切開を要するなど実臨床応用には課題が残る結果であった。そこで、この腸管再生モデルを組織工学、再生医療、光細胞工学の観点から改変することとした。組織工学の観点からは、細胞生着の優れた足場であり、生体内で加水分解される生体分解性チューブを使用することとした。また、再生医療の観点から、幹細胞単体よりも生着率、分化能が優れるとされる腸管オルガノイドを使用することとした。更に、細胞増殖を誘導するとされる赤色LEDを、移植細胞に前照射することとした。これらの改変により、腸管再生速度、再生腸管機能が改善され、かつ、足場の除去に再開腹・腸管損傷が不要であるという仮説を立て、短腸症候群における腸管再生の臨床応用を目指しその有用性について検討する。 研究計画としては、1.in vitroで赤色LED照射の腸管オルガノイドに対する効果を検討する。2.in vivoで生体分解性チューブによる腸管再生モデルに赤色LED照射処理をした腸管オルガノイドを投与し、腸管再生促進効果を検討する。3.再生腸管の機能的評価を行う、とした。 研究1年目は、ラットで腸管再生モデルの作成に成功した。12週目に完全な腸管の再生が確認できた。これをコントロール群として、さらにシリコンチューブの代わりに生体分解素材チューブを用いたモデルの作成にも成功した。さらに、現在ラット腸管オルガノイドの単離を行い、培養を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、生体分解性チューブをscaffoldにした腸管再生モデルにおいて、赤色LED照射にて処理された腸管オルガノイドを線維性被膜内に注入した場合、腸管再生速度の促進および足場の除去を要さない長い再生腸管が得られる。短腸症候群患者において比較的簡単な手術手技や安価なLED照射によって自己組織による効果的な腸管の延長が可能となり、短腸症候群の臨床応用を目指すものである。 研究計画として、1.in vitroで赤色LED照射の腸管オルガノイドに対する効果を検討する。2.in vivoで生体分解性チューブによる腸管再生モデルに赤色LED照射処理をした腸管オルガノイドを投与し、腸管再生促進効果を検討する。3.再生腸管の機能的評価を行うことの3つを立案した。研究がやや遅れている理由としてラット由来オルガノイドの安定した単離・培養手技が難しく、苦労していることと、同時にモデル作成を行っているが、術後に死亡するラットが多く、腸管再生モデルの手術手技が安定し、モデルとして使用出来るようになるのに時間を要しているためである。
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Strategy for Future Research Activity |
今後の研究としては、1.in vitroで腸管オルガノイドの三次元培養を確立する。そのオルガノイドに赤色LEDを照射して、その効果を測定する。具体的には、赤色LEDを培養した腸管オルガノイドに照射し、最も強い増殖能が得られる波長・照射時間を決定し、その条件下で腸管オルガノイドに赤色LED照射を行い、その増殖能(細胞周期、Ki67 index)およびその形態変化を調べる。そして、培養液中のROS発現、Western BlotでERK、Cyclin D発現を調べ、サイトカイン(VEGF、 FGFなど)も測定する。 2.ラット腸管再生モデルに対する腸管オルガノイド投与の効果、腸管機能評価を行う。 Wistar rat(8週齢)(体重250g)を用い、腸管再生モデルを作成(コントロール群)後、1週後に再開腹し上記の基礎実験で得られた条件で赤色LED照射を行った腸管オルガノイドをチューブ周囲の被膜内に移植する。1)コントロール群、2) 腸管オルガノイド投与群、3) 赤色LED照射群、4) 腸管オルガノイド投与+赤色LED照射群(各n=5)4群に分けて、2、4、8週間後に擬死させ組織を採取、再生腸管の長さを計測、HE染色で絨毛長も測定し腸管の再生能を評価する。また、腸管機能を各群で下記の機能評価を行い、比較検討する。 さらに、消化吸収能(ブドウ糖、アミノ酸、脂質乳化液)、再成腸管の形態(H.E染色)、腸管蠕動機能(腸電位計)、消化酵素分泌能(マルターゼ、ラクターゼ)も測定する。
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Research Products
(1 results)