2019 Fiscal Year Research-status Report
がん患者の妊孕性温存に向けた化学療法の卵巣傷害機序の解明と新規卵巣保護法の開発
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19K24021
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 望 東京大学, 医学部附属病院, 特任臨床医 (20847280)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 妊孕性温存 / 早発卵巣機能不全 / 癌生殖 / 小胞体ストレス応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、癌治療の発展及び生殖医療の進歩に伴い、小児、思春期・若年成人のがんサバイバーに対する生活の質(QOL)に対して注目が集まっている。がん治療に伴う卵巣毒性によって、妊孕性の損失だけでなく、早発閉経に伴う晩期障害により長期的な影響を受ける。現時点ではがん治療に対する卵巣毒性を軽減する方法はなく、卵巣毒性に対する分子生物学的メカニズムが完全には解明されていない。一方で、正常の卵胞発育・成熟において至適な局所環境形成における卵巣局所因子の重要性が注目され、中でも細胞の恒常性維持にかかわる小胞体ストレスが卵巣の病態に関与することを申請者らは示してきた。この研究計画では、卵巣局所環境の変化として小胞体ストレスに着目し、抗がん剤投与による早発卵巣機能不全を起こすメカニズムを解明することを目的とする。本研究によって、抗がん剤投与による卵巣局所環境・局所因子への影響が明らかとなれば、抗がん剤投与に伴う早発卵巣機能不全を予防する新たな治療戦略となることが期待される。 抗がん剤投与が卵巣局所環境にどのような変化をあたえているかを検討するため、抗がん剤投与早発卵巣機能不全モデルマウスの作成を行った。6週齢のC57BlL6マウスにシクロフォスファミド75mg/kgを腹腔内投与し、1週間後に卵巣を摘出した。卵巣検体をHE染色を行い、各発育段階の卵胞数を計測した。コントロール群と比較して、早発卵巣機能不全モデルマウスでは原始卵胞及び一次卵胞数が減少し、二次卵胞及び胞状卵胞数が増加しており、既報の卵巣機能不全モデルと同様の傾向を示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
抗がん剤投与早発卵巣機能不全モデルマウスを作成することができた。今後、このモデルマウスを用いて、免疫染色およびqPCRを行い、抗がん剤投与によって卵巣における小胞体ストレスが活性化しているかどうかを調べていく。
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Strategy for Future Research Activity |
6週齢のC57/BL6マウスにシクロフォスファミドを腹腔内投与し、1週間後に卵巣を摘出する。摘出卵巣検体を用いて、各発育段階の卵胞における小胞体ストレスの活性化(p-PERK, p-IRE1, CHOP)を免疫染色法にて評価する。また、卵巣組織を用いて小胞体ストレス応答因子(XBP1(S), HSPA5, ATF4, ATF6)の発現を定量的PCR法、ウェスタンブロッティング法を用いて調べる。早発卵巣機能不全モデルマウスに小胞体ストレス抑制剤(TUDCA, BGP-15)を投与し、その予防的効果を評価する。卵巣切片を用いて、原始卵胞数の変化及び原始卵胞におけるPI3K/PTEN/Akt経路の活性化、発育卵胞の顆粒膜細胞におけるアポトーシス、卵巣の線維化を評価する。
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