2019 Fiscal Year Research-status Report
ペプチド核酸を応用したS. mutansに対する特異的増殖抑制法の確立
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19K24083
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Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
杉本 貞臣 大阪歯科大学, 歯学部, 助教 (90846784)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | Streptococcus mutans / PNA / 必須遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、メタゲノム解析による腸内細菌叢、あるいは口腔内細菌叢とそれら遺伝子構成の解明が進められている。これに伴い、今後ヒトの健康や疾病と関連性の高い細菌種や遺伝子がより詳細に明らかになると考えられる。 それら解析データに基づき、口腔内や腸内の細菌叢をコントロールする方法を開発することができれば、人の健康増進に大きく貢献できる可能性がある。細菌叢のコントロール方法としては、ヨーグルトに代表されるプロバイオティクスが一般的であるが、この方法のみでは菌叢を狙い通りにコントロールすることは困難である。 本研究は、細菌叢のコントロール方法として、新しい戦略の必要性を考え、ペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid : PNA)を応用したアンチセンス創薬の開発をめざすものである。 PNAとは主鎖にペプチド構造の骨格をもち、その側鎖部分に核酸構造を持つ分子である。PNA は人工的に合成された非天然ペプチドの一種であり、ヌクレアーゼやプロテアーゼによって分解されにくい性質をもっている。さらにキャリアーペプチドと呼ばれる短鎖ペプチド構造を付加することによって効率よく細胞内へ導入することができる。 今回はPNAを応用し、Streptococcus mutansを標的とし、菌種特異的な増殖抑制が可能であるか検討した。標的とするStreptococcus mutans の株(ATCC)を決定し、培養に成功した。また標的遺伝子の選定のため、必須遺伝子(acpP, murA, fabI, ftsZ)ならびにバイオフィルム関連遺伝子を候補として、アンチセンスPNAの効果(最小発育阻止濃度、ならびにバイオフィルム形成能)の検証を現在行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は、細菌叢のコントロール方法として、新しい戦略の必要性を考え、ペプチド核酸(Peptide Nucleic Acid : PNA)を応用したアンチセンス創薬の開発をめざすものである。 今回、PNAを応用し、Streptococcus mutans を標的とし、菌種特異的な増殖抑制が可能であるか検討した。まず、標的とするStreptococcus mutans の株(ATCC)を決定し、培養に成功した。また細胞内への導入に関与するキャリアーペプチドについては、蛍光ペプチドライブラリー(Kitamatsu et al, Chem Commun 2010, Bioorg. Med. Chem. Lett 2010)を作成し、細胞導入試験を行った。PNAが細胞内に効率よく導入されるよう、キャリアーペプチドの配列も決定した(KFFの繰り返し配列)。さらに、標的遺伝子の標的部位も決定した。
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Strategy for Future Research Activity |
Streptococcus mutans (ATCC) が選択的に増殖抑制されるよう、菌種特異的な配列を持つ標的遺伝子の選定を行う。現在の候補としては、必須遺伝子、acpp、murA、fabI、ftsZ、gtfである。また、アンチセンスPNAの効果(最小発育阻止濃度、ならびにバイオフィルム形成能)も検証する。さらに、細菌叢のコントロール法として、複数細菌種の混合培養を行い、アンチセンスPNAを添加した場合の菌叢変化を解析する。 PNA の合成に関しては、水溶性PNA にキャリアーペプチド、ならびに標的遺伝子アンチセンス配列を付加して合成する。キャリアーペプチド配列(KFFKFFKFFK)を付与したアンチセンスPNA を当面は合成し、キャリアーペプチドのスクリーニングを並行して抑制試験を実施する。 標的遺伝子の発現抑制試験と細菌の増殖抑制試験は、Nekhotiaeva らの記載(Molecular Therapy, 2004)に準じて行う予定である。複数菌種の混合培養液、あるいは唾液サンプルを使用し、特異的ならびに非特異的な細菌増殖抑制と遺伝子発現の抑制が可能であるかも評価する予定である。
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Causes of Carryover |
今年度では、アンチセンスPNA をStreptococcus mutans に作用させるため、菌株の選定のために助成金を使用した。主な内容としては、菌株、培地、その他の機材である。 今後、KFF 繰り返し配列のキャリアーペプチドを付与したPNAを設計・合成し、Streptococcus mutans に対する増殖抑制試験を実施する。PNA の構築、またPNA を菌株に添加したときのたんぱく質の増殖抑制を確認するため、Western Blot の抗体(1次抗体、2次抗体)にも助成金を使用する予定である。また、菌の増殖抑制は吸光度にて計測を行うため、PNA の添加により濁度に影響が及ばないよう、PNA の構築には細心の注意が必要である。
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