2019 Fiscal Year Research-status Report
口腔内病変を生じた類天疱瘡患者の唾液中自己抗体の病原性解析
Project/Area Number |
19K24134
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
和田 麻友美 北海道大学, 大学病院, 医員 (10846207)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 水疱性類天疱瘡 / 粘膜類天疱瘡 / 自己抗体 / 唾液 |
Outline of Annual Research Achievements |
水疱性類天疱瘡(BP)は、主に表皮基底膜のヘミデスモゾーム構成分子である17型コラーゲン(COL17)/BP180を標的とする自己免疫性水疱症である。COL17に対する自己免疫反応が病変形成に重要であり、特に細胞膜近傍、細胞外領域のNC16A領域に対する自己抗体の病原性(水疱形成能)が証明されている。一方、口腔粘膜に難治性のびらんを生じるBPの類縁疾患である粘膜類天疱瘡(MMP)では、COL17のNC16A領域ではなくC末端領域に対する自己抗体を認め、BPより血中自己抗体価も低値のことが多い。しかしMMPでは、COL17のC末端部を標的とする自己抗体によって粘膜病変を来す機序は十分解明されていない。また、MMPではBPより抗体価が低いにもかかわらず口腔内に病変を生じる。口腔内は常に唾液にさらされており、唾液中には血液由来の抗体が含まれている。BPやMMPで口腔粘膜に形成されるびらんは難治性であり、「MMPやBPの口腔内病変の増悪因子のひとつとして、唾液中の抗体も関与しているのではないか」と推測した。BPやMMP患者の唾液中よりIgAやIgGが検出された報告は認めるが、その病原性についての報告はない。また、損傷した上皮はバリア機能が欠落し、高分子タンパク質や細菌、ウイルスなどを通過させる(Marion. M.ら,Journal of Cell Science. 2017.)ことが証明されており、BPやMMPによりびらんが生じた口腔粘膜上皮からの抗体侵入は可能なのではないかと予測した 。 本研究は、唾液中に自己免疫水疱症の自己抗体が存在するという最近の知見に着目し、MMP患者の唾液中に含まれる自己抗体を解析し、MMPの病態機序を解明するため、1)BPとMMP患者の唾液中自己抗体の同定、2)唾液由来自己抗体の病原性の検討、3)In vivo による自己抗体の病原性の検討を行う。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究は申請者が一人で行うが、BPやMMPの患者から採取した唾液検体を要する。当科を受診した新規外来患者で研究を行う予定であったが、まれな疾患のため、n数の確保に難渋している。新規患者だけではなく、通院中の患者で口腔内に症状のある患者等、対象者を拡大していく必要がある。患者の血液検体を用いたELIZAや免疫染色を用いた自己抗体の同定を行っており、現在、唾液検体の精製について検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
唾液検体を精製し、免疫学的検査に利用できるようであれば、NHEKなどに精製した唾液を反応させ、病原性の有無を検討する。NHEKなどの細胞は、北大皮膚科学教室から提供を受ける予定である。唾液中の自己抗体の病原性の解析は世界でも未発表であり、病態解明に有益なデータとなるものと思われる。
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Causes of Carryover |
研究の進行度がやや遅れていることや、COVID-19の影響で参加予定であった学会をキャンセルしたため、次年度使用額が生じた。次年度も研究の継続が必要であり、学会発表を予定している。シャーレやチューブ、抗体などの物品を購入する。
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