2019 Fiscal Year Research-status Report
骨代謝のスイッチを変換する骨細胞の酸素濃度感知による矯正的歯の移動制御機構の解明
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19K24145
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
小田垣 直弥 岡山大学, 大学病院, 医員 (50845378)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 矯正的歯の移動 / 低酸素環境 / 骨代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨細胞は石灰化した骨基質内に存在し、骨へのメカニカルストレスの感受やその情報伝達において中心的な役割を果たす。一方、低酸素環境は生体内で生理的に存在し、組織幹細胞の維持に重要な役割を果たしている。近年、低酸素環境は骨細胞により感知される事で骨細胞が骨量を制御するという報告がされ、骨代謝の新規制御因子として脚光を浴びている。申請者は、矯正的歯の移動時の圧迫側歯槽骨では骨細胞の酸素濃度感知が起点となり、骨代謝のスイッチが骨吸収へと変換されるのではないかという仮説を立てた。本研究は、in vitro, in vivoの実験系を用いて矯正的歯の移動における低酸素環境を再現し、上記仮説を検証する事を目的とする。 本年度の研究は、まず実験的歯の移動モデルを作製し、組織染色および蛍光免疫染色を行った。次に、圧迫側で生じる低酸素関連因子の詳細を解析するため、バイオインフォマティクスを用いた解析手法により時空間的(位置、程度、タイミング)な定量を行った。その結果、圧迫側においてHif1-αをはじめとした低酸素関連因子発現の増加を認めた。次に低酸素培養装置を購入し、低酸素状態下で歯根膜細胞および骨細胞におけるHif1-αの増加を確認した。また、歯根膜細胞および骨細胞の共培養モデルを作製し、矯正的歯の移動モデルにおける圧迫側を再現した。今後、このモデルを用いてRT-PCR、ウエスタンブロットを行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は矯正的歯の移動時の圧迫側歯槽骨では骨細胞の酸素濃度感知が起点となり、骨代謝のスイッチが骨吸収へと変換されるのではないかという仮説を立てていた。実験的歯の移動モデルを用いた実験の解析結果から、圧迫側における低酸素関連因子の変化が確認できた。この結果をもとに、in vitroの実験へ移行していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は歯根膜と骨細胞の共培養を行い、歯根膜に圧迫負荷を加えた上で、細胞内のRNAおよびタンパクを確認するため、RT-PCRおよびウエスタンブロットを行う。また、培養上清中の分泌タンパクを定量するため、ELISAを行う。さらに中和抗体を用いることで歯根膜細胞と骨細胞の相互作用を検討する。
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Causes of Carryover |
コロナウイルスにより実験室の利用が不可能な時期があったことから、施設の利用料が予定より減額された。これらは次年度の施設利用料に使用する予定である。
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