2019 Fiscal Year Research-status Report
ラット三叉神経節における感覚モダリティの三次元分布の提供
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19K24151
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
千堂 良造 鹿児島大学, 鹿児島大学病院, 助教 (30852107)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ラット / 三叉神経節 / 細胞体 / 分布 / 異所性疼痛 / 痛覚過敏 |
Outline of Annual Research Achievements |
異所性疼痛や痛覚過敏のメカニズムの一つとして、基礎研究においてはラット三叉神経節での神経細胞体同士による相互作用が着目されている。相互作用を及ぼす神経細胞体同士は近接していると考えられるが、どのような末梢組織を支配する神経の細胞体同士が近接しているか、三次元的な地図を提供しているものはない。そこで、本研究では特に侵害受容器に着目したラット三叉神経節における細胞体分布様式を提供することを目指す。 本研究では、口腔顔面領域に逆行性トレーサーを注入し、組織透明化技術と免疫組織化学染色を組み合わせた後、共焦点レーザー顕微鏡で網羅的に撮影を行うこととした。これまでに、口蓋、上顎臼歯歯髄、咬筋、下顎臼歯歯髄、舌へ逆行性トレーサーを注入した、すなわち口腔領域を支配する神経細胞体の分布領域はオーバーラップする割合が高いことが示唆された。また、上顎神経および下顎神経は一部、細胞体が連続する領域が三叉神経節の背側部に存在していること、下顎神経内では現在のところ末梢組織毎における分布の偏りが認められないことが観察された。一方、上眼瞼、角膜、眼窩下神経へ逆行性トレーサーを注入し、標識された細胞体はオーバーラップする割合が低いことが示唆された。また、上下顎の臼歯歯髄、下顎臼歯歯髄と咬筋、下顎臼歯歯髄と舌においては細胞体が近接して存在する部位があることを確認した。 これらより、現在のところでは相互作用を及ぼしやすい末梢組織と、相互作用を起こしにくい末梢組織の組み合わせが存在する可能性が考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
免疫組織化学染色の後、組織透明化を行うと三叉神経節の浅部と深部で褪色する量に差がある可能性が認められたため、免疫組織化学染色を併用したプロトコルを再度確率する必要性がある。また、逆行性トレーサーの種類により、軸索輸送の差があり標識される細胞体数が異なるため、注入部位および注入する逆行性トレーサーの組み合わせを反対にした検討も行う必要性がありサンプル数を2倍にしなくては十分な検討が行えないと考えられた。また口蓋など注入部位によっては著しく再現性の悪い末梢組織が存在し、注入手技の確立も必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
免疫組織化学染色で安定した染色が得られる抗体の検討を行い、褪色のムラを減らすプロトコルを確立する。逆行性トレーサーについては、これまで確立された2種類のものを使用し、サンプル数を2倍とし十分な検討を行なっていく。注入手技により再現性の得られにくい口蓋などへの注入は、刺入深さを変更して対応していく。 今後は、より精緻な三次元的分布様式の提供のため、上述のような対応を取りながら、サンプル数を増やしていく予定である。また、実験で得られた結果を学会や論文などを通じて、多くの研究者とディスカッションしていく予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度10月~3月の多くは九州歯科大学へ国内留学していたため、本研究において当該科研費を使用しての実験はあまり行っていない。本研究課題に必要な研究手技やプロトコル、既存の試料を用いたセンプル採取を行ってきたため、当初予定より大幅に執行額が減少する結果となった。 翌年度においては、データの精度向上のためサンプル数を2倍にする必要性があり、当初の計画と比較し大幅な経費増大が見込まれるため、そのための費用として使用する予定である。
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