2019 Fiscal Year Research-status Report
数理モデルを用いたワクチンの間接的効果と最適な予防接種政策の特定
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19K24159
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鈴木 絢子 北海道大学, 医学研究院, 助教 (90849986)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 数理モデル / 予防接種 / 費用対効果分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はワクチンの間接的効果を考慮しつつ最適な予防接種政策を確立すること、ワクチン予防可能感染症の再興リスクをリアルタイムで監視するシステムを構築することを目的とし、以下の3つの研究課題を設定した。 1.数理モデルを用いて、集団免疫効果を加味した費用対効果分析を確立し、最も効率的な予防接種政策の選択を系統的に判断可能なシステムを構築する。 2.上記の数理モデルを用いて、予防接種による薬剤耐性菌の減少効果を評価する。 3.感染症排除後、集団免疫が低下した場合の大規模流行リスクを人口レベルでモニタリングする手法を考案する。 2019年度は3課題のうち、課題1に取り組んだ。第一に予防接種率の変化に伴い、感染者数の変化をモニタリング可能とする数理モデル(SIRモデル)の構築を行った。第二に小児の定期接種対象感染症に関し、世界の疾病負荷研究(Global Burden of Disease: GBD)より参照した障害係数(Disability weights)を用いて、それぞれの疾患の障害調整生命年(Disability-adjusted life years: DALYs)を求め、前述の数理モデルを用いて予防接種率の変化に伴うDALYsの変化を計算した。さらに、予防接種の費用、感染症による治療や死亡に伴う費用考慮し、予防接種率の変化に伴う費用を計算した。以上を利用して各ワクチンについて予防接種率の変化に伴う増分費用効果比(Incremental Cost Effectiveness Ratio: ICER)を計算した。一部の小児の定期接種対象疾患は予防接種率の上昇に伴い疾病負担が低下しており、費用対効果も低下している。それぞれのワクチンについて、予防接種率の変化に伴うICERを求めることで、優先順位の高いワクチンを明らかにし、定期接種の継続可否についての根拠を提示することができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
所属研究室が新型コロナウイルス感染症対策のために、2020年2月以降、日本の感染状況のデータ分析を行う業務に従事することとなり研究に着手できていないため。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画では課題1を2019年度に終了し、2020年度以降に課題2、3に着手する予定であったが、課題1が全て終了していない。新型コロナウイルス感染症対策の業務の状況により、3つの研究課題を2つに変更することを検討する。
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Causes of Carryover |
第90回衛生学会学術総会に参加予定であったが、開催が中止となり、旅費を使用しなくなったため生じた。次年度の旅費に当てる予定である。
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