2021 Fiscal Year Annual Research Report
G4P[6]ブタロタウイルスのヒトへの種間伝播と適応過程の解明
Project/Area Number |
19K24260
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Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
金子 美穂 (後藤美穂) 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 助教 (50599909)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2022-03-31
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Keywords | 急性胃腸炎 / ロタウイルス / 種間伝播 / G4P[6] / 全ゲノム解析 / ベトナム |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、ベトナムの下痢症患児から検出したロタウイルスの遺伝子型を判定し、G4P[6]株とその関連株の全ゲノム解析を行うことにより、1) ヒトのロタウイルス感染におけるG4P[6]ブタロタウイルスの寄与を評価すること、2) G4P[6]ブタロタウイルスの種間伝播の様式とヒトへの適応過程を明らかにすることを目的とした。 令和3年度は、G4P[6]株、G4P[8]株、G3/G5/G9P[6]株のすべてについて全ゲノムシークエンシングを完了し、その解析により以下のことが明らかとなった。 1) すべてのP[6]株はブタロタウイルスに一般的に見られる遺伝子型構成(G3/G4/G5/G9-P[6]-I1/I5-R1-C1-M1-A1/A8-N1-T1/T7-E1-H1)を有しており、すべての遺伝子分節において既知のブタロタウイルスと高い相同性を示した。2年間に採取した1252のロタウイルス陽性検体のうち28検体からG4P[6]株が検出されたことから、ベトナムの小児のロタウイルス下痢症の約2%がG4P[6]ブタロタウイルスによるものと結論づけられた。 2) 2016年3月に検出された2つのG5P[6]株、2016年6月と8月に検出された2つのG4P[6]株、2017年6月に検出された3つのG4P[6]株は各組の株間ですべての遺伝子分節において塩基配列の相同性が99%を上回っており、3組の同一株であると考えられた。これらの株は互いに疫学的関連のない患児から検出されており、同地域の小児集団内で維持されていた可能性が考えられた。 本研究により、本来はブタを宿主とするP[6]ロタウイルスがヒトからヒトへの感染を起こしている可能性を見出した。同地域のブタにおけるロタウイルスの分子疫学情報を得ること、現行のワクチン接種による免疫応答のP[6]株に対する交差反応性を検証することが今後の課題である。
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