2019 Fiscal Year Research-status Report
壮年期の脳血管疾患の人に特化した状態把握ツールの開発
Project/Area Number |
19K24270
|
Research Institution | Japanese Red Cross College of Nursing |
Principal Investigator |
竹山 美穂 日本赤十字看護大学, 看護学部, 助教 (20846852)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | 脳血管疾患 / 壮年期 / 可視化 / 数値化 / 状態把握 / ツール / 尺度開発 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、65歳以下の壮年期の脳血管疾患の人に特化した状態把握ツールを開発することである。このツールは、医学的には問題とならないが回復・生活を困難にしている要因について、本人の視点で可視化・数値化することを目指し作成している。 そのため、壮年期に脳血管疾患を発症した人から直接インタビューをした上で、ツールに必要なアイテムプールを収集する必要がある。2019年度は、ツールの根幹となる構成概念の検討を行った上で、「質問紙原案の作成」と題しインタビュー調査を行った。インタビュー調査は、脳血管疾患を発症したばかりの患者から回復後在宅で暮らすまでの幅広い疾病過程の対象者に協力を得る必要があった。そのため、病院・企業・リハビリテーション施設に研究協力依頼を行った。 企業およびリハビリ施設への協力依頼には難渋した。一方で、脳卒中急性期医療機関の2病院には、専門医および看護師の多大な協力を得て、入院中および外来通院中の対象患者16名にインタビューを実施することができた。協力者16名の内訳は、男性15名・女性1名、平均発症年齢は52.9歳であった。発症からインタビューまでの年月は、発症5日から10年以上までと多岐にわたり、平均で2.26年であった。疾患別内訳は、脳梗塞8名、脳出血5名、くも膜下出血2名、その他1名と、おおむね統計と類似しており網羅できていると考える。また、インタビュー内容では、軽症であっても孤立感を抱えていること、医学的には問題にならない症状に詳細に意識を向けていること、社会復帰をしても不安が拭い去れないばかりか実際に離職を経験していることなど、豊富な語りを得ることができた。今後は尺度項目を洗練させ、内容妥当性の検討を実施していく予定である。また、インタビューで得られたデータについて、大変貴重なデータであるため、質的にも分析を進め、学会等で発表していきたいと考えている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究開始当初は、教員1年目で仕事に慣れず、教育活動の合間をぬって研究をする時間の確保が難しく、なかなか取り組むことが出来なかった。また、研究に取りかかっても、患者対象の研究のため、年々厳しくなる研究倫理審査を通過することに時間がかかり、2施設の協力病院の倫理委員会の審査結果を調整し、共通の許可を得られるまでに予想以上に時間を要した。病院内の研究協力者(医療者)からは、多大な力添えをいただくことが出来た。そのため、インタビュー調査に関しては、目標人数以上の協力が得られ、豊富なデータが収集できた。 病院以外のリハビリテーション施設や地域で暮らしている脳血管疾患の方を対象とすることも必要だと考え、リハビリ病院や有料でリハビリを提供している企業にも研究協力を依頼した。協力を依頼した企業は、医療制度と介護制度の狭間でリハビリを受けられない脳血管疾患の人に対し、患者が希望するリハビリを実施する企業であった。壮年期に脳血管疾患を発症した人は、早期に社会復帰を切望するため、このような企業を利用する対象者が増えることが予想された。企業側は本研究に興味を持ち協力の意思を示したが、研究協力にあたり複数の条件を提示してきた。しかし、本学の産学連携に対するスタンスと企業側の提示条件とは合致せず、様々な部署や弁護士に相談したが、交渉に難渋し断念した経緯がある。また、リハビリ施設への研究協力依頼には新型コロナウイルス感染症の影響で丁重に断られた。 さらに、新型コロナウイルス感染症の影響が長期に継続しているため、病院内に立ち入ること、医療者や患者に接触することが出来なくなり、研究活動が大幅に滞っている。研究の次の段階として、尺度項目の内容妥当性の検討を実施するため、数名の医療者や対象者に意見を伺う予定であったが、感染防止もふまえた研究方法の再検討が必要となり、予想以上に時間を要すると考える。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究の推進予定は、インタビューで得られたアイテムプールについて、数名の医療者や脳血管疾患を発症した方に確認し、尺度項目の内容妥当性の検討を実施する。その上で、壮年期に脳血管疾患を発症した方を対象にした予備調査と本調査を行い、信頼性と妥当性の検証を行っていく予定である。 その際の最大の課題は、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)による影響である。当初の予定では、予備調査の段階までは、対面で研究の説明および協力依頼を行うこと、内容妥当性の検討を実施するために、数名の医療者や患者に対面でお話を伺ったり、ご助言をいただく予定であった。また、信頼性と妥当性を検証するために、いくつもの病院に掛け合って、予備調査と本調査を実施していく予定であった。しかし、COVID-19により病院内に入ること、患者・医療者に接触することが出来ないため、倫理的配慮を大幅に変更した上で、研究方法の再検討していく必要がある。特に、病院に依頼する予定であること、脳血管疾患を発症した方に依頼をしていくことから、倫理的配慮に加え感染予防の観点からも特段の配慮が求められる。 そこで、今後の進め方としては、対面を要しない方法に変更し、実施していきたいと考えている。具体的には、内容妥当性の検討の際には、対象者との面談はインターネットを介したWeb上での対面や紙面を介したやり取りへ変更し、感染のリスクと対象者の負担が少ない方法で実施しご意見を伺っていく。また、予備調査と本調査の際に病院へ依頼する時は、可能な限り紙面やメールなどで対応していただけるよう依頼した上で実施する。ただし、COVID-19により研究の実施自体が病院への負担となることも十分に予想されるため、脳血管疾患を発症した方への協力依頼は、全国規模の患者会などの団体にもアプローチし、紙面を介したやり取りで実施していきたいと考えている。
|
Causes of Carryover |
2019年度は、研究の協力依頼・インタビュー後のデータ保存の際に使用するための、持ち運び可能なパソコンおよび周辺機器を購入し、日々使用している。2月末には、米国で開催予定であった「International Stroke Conference(ISC)」に参加する予定であった。それに伴って、医療専門用語を含む会話をよりスムーズにするため、自動通訳用の機器も購入し、米国での学会参加の準備を進めていた。しかし、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が世界的に流行し始め、罹患および出入国が困難になることが予想されたため断念した経緯がある。また、インタビュー調査が遅れたため、テープ起こし代として多額の使用を予定していたが、2020年度に持ち越して使用することとなった。 2020年度は、300~400名規模の予備調査と本調査を実施予定であるため、印刷費と郵送費ならびに研究協力の謝礼費を必要とし、使用する予定である。データを収集したのちには、膨大なデータ入力の際に研究協力を依頼するためのアルバイト費用の謝金として使用する予定がある。分析の際には、最新の研究資料や統計手法にまつわる専門書・脳神経外科および看護についての専門書について新たに購入する予定がある。また、学会発表のため旅費を使用すること、論文投稿のためのネイティブチェックに関わる外部委託費にも使用する予定である。
|