2019 Fiscal Year Research-status Report
1000倍規模のブロックチェーン取引生成に耐えるGPU内ブロックチェーンシステム
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19K24350
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
森島 信 富山県立大学, 工学部, 助教 (90843748)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | ブロックチェーン / GPGPU / 異常検知 / ビットコイン |
Outline of Annual Research Achievements |
ブロックチェーンは、P2Pネットワークで構築された分散型台帳システムであり、国際送金や個人間取引を直接取引により短時間かつ低コスト化する手段として用いられている。しかし、ネットワークを構築するフルノードの処理性能がボトルネックとなり、取引生成性能が低いという問題点がある。本研究では、並列処理性能に優れたデバイスであるGPUのデバイスメモリ内にフルノードの取引情報を格納し、読み込み、書き込みそれぞれのボトルネックとなる処理全てをGPU内で処理するGPU内ブロックチェーンシステムを提案し、フルノードを高性能化する。ブロックチェーンの書き込み処理には、過去の取引の情報を利用した検証を行う必要があるため、書き込み処理には読み込み処理も含まれ、読み込み処理の高速化が書き込み処理の前提ともなる。そのため、初年度は読み込み処理の高速化を主な対象とし、以下の実績を上げた。 (1) ブロックチェーンのフルノードにおけるIDを用いた取引の検索処理をブロックチェーンのデータが追加のみであるという特徴を活かした木構造を用い、その木構造をGPU内にキャッシュすることによって高速化を行った。これにより、ブロックチェーンの読み込みクエリが集中する大規模なサービスを提供するフルノードにおける検索スループットの向上に成功した。 (2) ブロックチェーンの各ユーザー間の取引をグラフ構造で表し、フルノードで用いる取引情報の一部をそのグラフ構造の付加情報として与えることで、取引情報をGPUメモリ内にキャッシュ可能な大きさにし、GPUを用いた取引分析の高速化を行った。アプリケーションとして、ブロックチェーン取引の異常検知を扱い、その高速化に成功した。 (1)は取引の検索、(2)は取引の中身を用いた分析として双方の手法を併用することで、フルノードにおける広範囲な読み込みクエリに対応可能である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究課題は、令和元年度の後半より開始した課題であるが、実際の研究には年度の前半より着手したことにより、計画段階より多くの成果を上げることに成功した。 具体的には、研究計画段階では、ブロックチェーンのフルノードにおける読み込み、書き込みクエリのうち、読み込みクエリを初年度に対象とし、高速化することとしており、その読み込みクエリの範囲はIDを用いた取引の検索のみであった。しかし、昨今のブロックチェーンを用いたサービスの多様化やセキュリティの観点から、単純な取引検索だけでなく、取引内容を用いた分析や異常検知もフルノードにおける読み込み処理としてボトルネックとなり得ることが分かった。そこで、対象とする読み込みクエリの範囲を広げ、単純なIDによる取引検索だけでなく、取引内容を用いた処理にも対応することとした。 【研究実績の概要】における(1)が当初計画していた読み込み処理であり、(2)が計画段階から追加した内容である。研究実績で述べた通り、(2)の高速化についても、昨年度中に達成することができ、当初計画にはなかった内容も含めた成果を得られたことから、進捗は当初の計画以上に進展していると言える。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、当初の計画通り、フルノードにおける書き込み処理を対象とする。既に書き込み処理の高速化のため、書き込み処理のどの部分がボトルネックとなるかの調査を行っている。その結果、特に楕円曲線暗号を用いた署名の検証がボトルネックとなっていることが判明した。楕円曲線暗号は、GPU処理で高速化の既存研究がある分野であり、読み込み処理で用いたGPU内キャッシュと組み合わせる事で、ブロックチェーンの特徴に特化した高速化が行える見込みである。 また、書き込み処理の高速化を行った後、読み書き双方の統合により、GPU内ブロックチェーンシステムの構築を行う。この際は、読み込み、書き込みそれぞれの手法で、GPU内でのキャッシュを用いるため、キャッシュポリシーや各データ構造の共通点の共有等を行うことにより、GPUメモリ内に収まる大きさのキャッシュとする。また、提案手法の拡張性を高めるため、複数のGPUへ拡張可能なような構造とする。 本年度は、新型コロナウイルスの影響が懸念されるが、本研究は人を対象とする研究ではないため、研究進捗に対する新型コロナウイルスの影響は軽微であると考えている。しかし、計画では、国内外での学会発表を積極的に行うこととしていたが、学会の中止などによる影響を受けることが想定される。今年度は、論文誌への投稿を主な対外発表手段とするとともに、オンライン開催の国際会議等への投稿を行うことで、可能な限り成果の対外発表も継続する予定である。
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Causes of Carryover |
本年度の予算として、GPU内ブロックチェーンにおける読み込み処理の実装、評価を行うための経費として物品費、国際会議旅費として旅費を計上していた。しかし、本研究を前倒しして年度前半から開始した関係上、他の予算で物品調達を行ったため、未使用が生じた。また、年度末に予定していた国際会議への出席が新型コロナウイルスの影響で延期となったため、旅費も未使用となった。 次年度は、GPU内ブロックチェーンシステム全体の構築にあたり、さらに大規模な環境での実装、評価を予定しており、この環境の構築のために未使用分の物品費も併せて使用する見込みである。また、旅費に関しては新型コロナウイルスの影響で今年度も未使用となる可能性があるが、その際には国際会議ではなく論文誌を中心に成果発表を行う予定であることから、論文誌掲載費等の国際会議以外の成果発表費用として旅費使用予定分を使用する予定である。
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Research Products
(2 results)