2019 Fiscal Year Research-status Report
プロセッサ性能カウンタを用いたアダプティブ電源制御による計算機電源の効率改善
Project/Area Number |
19K24356
|
Research Institution | Kanagawa Institute of Technology |
Principal Investigator |
河口 進一 神奈川工科大学, 健康医療科学部, 教授 (30850945)
|
Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
|
Keywords | プロセッサ電源 / 性能カウンタ / デジタル電源 / アダプティブ制御 / 効率改善 |
Outline of Annual Research Achievements |
プロセッサ消費電力測定インタフェースおよび同時刻のプロセッサ性能カウンタインタフェースを備える計算機システムを構築した。負荷電流計測においてオンボードのプロセッサ電源によるリップルノイズの影響を排除するために、オンボードPOL電源を切離し、プロセッサのみ外部の直流安定化電源装置から電力供給する給電方式が実現できた。電力計測は、電源経路およびキャパシタ充放電経路に電流プローブを導入することで寄生インダクタンスによるノイズを抑えた負荷情報が採取出来ることが確かめられた。さらにプロセッサ内の性能カウンタ動作毎の論理出力信号を外部に引き出し、デジタルオシロスコープにより負荷電流と同じタイミングでプロセッサ性能カウンタ動作を論理的に採取できるシステムが構築できた。この結果、電源制御への応用に向けて、プロセッサ消費電力および性能カウンタ値の数μ秒オーダの時間間隔での負荷電力変動計測が出来る環境を整えることができた。 実験計算機システムにはLINUX OSを稼働させ、一部のCPU系、I/O系アプリケーション実行中のプロセッサ消費電力および性能カウンタ値を時系列に採取した。試行的に採取した消費電力および性能カウンタ情報に基づき重回帰分析による相関性の分析を行った。この結果、数μ秒オーダでは0.9を超える決定係数があり高い相関性のある説明変数が得られた。本説明変数をパラメータに用いることで予測精度の高い電力推定式が得られることが確認できた。 上記で得られた電力推定式のデジタル電源制御への応用を検討した。予測推定式内の平均処理を、デジタル電源制御内のDSPでの差分方程式に変換することで、性能カウンタ情報をDSPが読み取りプロセッサ電力予測が行えることをシミュレーションにより検証した。また、差分方程式のパラメータを自動推定するアルゴリズムを考案し、良好に機能することが確認できた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
プロセッサ負荷電力計測システムの構築に想定以上の時間を要した。プロセッサ電源は大電流のために供給経路が複数存在し、出力キャパシタからの充放電電流も加味する必要がある。当初、これらの複数経路に電流計測用のシャント抵抗を挿入し計装アンプにより信号を取り出す計画を立てた。しかし電源のリップルノイズに加えてシャント抵抗の寄生インダクタンス成分によるノイズが重畳し、精度の高い負荷電力情報が得られなかった。そのため、プロセッサ電力供給経路とオンボード電源を切離し、出力が安定している直流安定化電源からのプロセッサへの電力供給を試みた。しかし、通電試験において搭載部品の故障が生じ、OSの立ち上げに至らなかった。最終的に故障部品が特定され、改修することで実験計算機システム上でLINUX OSを稼働させることが出来たが、本故障解析にも時間を要した。 また、年度終盤からの新型コロナウィルス感染症対策での研究施設への入構禁止により、実験計算機システムを用いたデータ採取が出来ない期間が続いており、電力推定に最適な性能カウンタ項目の明確化検討が停止している。また事前に採取されたデータに対する計算処理環境においても制約が出ており、予定されていたデジタル電源シミュレーションによる効率制御検討に着手できていない状況となっている。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究施設への入構再開後、性能カウンタ計測項目毎に回帰分析による電力推定式パラメータの検討、予測精度の評価に着手し、電力推定に最適な性能カウンタ項目を明確にする。また、デジタル電源制御を含むシステムシミュレーション環境を整備し、プロセッサ電力供給における効率改善の検証を行う。実験計算機において、電力計測の精度を上げる必要がある場合は、直流安定化電源による電力供給経路を分散させ電流プローブを追加する計画である。 アダプティブ電源制御システムハードウェアによる実験検証に向けた検討を開始する。昨年度考案したDSPアルゴリズムの実デバイスへの実装を行い、実験計算機システムへの組み込みを行う。実験計算機システムが連続的に出力する論理情報に基づきDSPハードウェアが常時プロセッサ消費電力を高精度で推定できることを検証する。 プロセッサ電力予測機能を備えたDSPデバイスに負荷連動電源制御を実装し、試作電源制御システムを準備する。電子負荷によってCPU負荷プロファイルを疑似的発生させ、試作電源システムからの電力供給の動作、効率改善効果に関して詳細な検証を行う。
|
Causes of Carryover |
当初計画した電流計測方式では精度が得られないことが判明し、電流プローブを用いた別の電流計測方式に切り替えた。計測方式変更による使用機材変更に加え、データ採取に遅れが生じたことおよび年度終盤での緊急事態宣言による研究会の中止等もあり使用額に差異が発生した。 次年度では予定されている電子負荷装置の導入および電流精度向上の必要性が見えた場合には電流プローブの追加整備も行う。また昨年度実施が出来なかったDSP実装検証のための消耗品購入、さらに得られている成果に関する論文の発表、学会発表に伴う費用での使用を見込んでる。
|