2019 Fiscal Year Research-status Report
Toxicity pathway analysis of fatty degeneration of liver induced by chemicals
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19K24389
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Research Institution | Okayama University of Science |
Principal Investigator |
齋藤 文代 岡山理科大学, 獣医学部, 准教授 (80800672)
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Project Period (FY) |
2019-08-30 – 2021-03-31
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Keywords | 肝毒性 / 脂肪変性 / 毒性パスウェイ / オミクス解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
肝臓は化学物質暴露により最も影響を受ける臓器で、医薬品開発で肝毒性は開発中止の主な要因の一つである。早期かつ高精度の安全性評価法開発には、肝毒性メカニズムの理解が必須である。本研究では、化学物質投与で生じる肝脂肪変性の細胞内イベントをタンパク質の機能的変化に注目し、遺伝子発現から組織変化までのデータを統合的に解析してシーケンシャルな毒性パスウェイを解明する。 初年度は、肝毒性のモデル化合物として四塩化炭素(CCl4)とエチオニン(ET)をWistar-Hanラットに7日、14日および28日間反復投与し、肝臓組織をDNA用、RNA用、免疫組織学的検査用に分けて採取した。同時に体重および臓器重量の測定、剖検、血液組織学的検査を行い、生体レベルで化学物質投与による毒性影響を調べた。その結果、CCl4およびETともに投与日数に応じて有意な体重抑制および肝臓の白色化がみられたものの、投与28日目で肝臓の絶対および相対重量が増加したのはCCl4のみであった。投与28日目の血液生化学的検査では、CCl4およびETともにALP、γ-GT、T-BilおよびTBAの有意な増加がみられたものの、AST、ALT、LDHの有意な増加がみられたのはCCl4のみであった。また、血中の総コレステロール量は投与7~14日まではCCl4およびETともに有意な減少がみられたものの、投与28日目ではCCl4投与群は媒体対照群とほぼ同じレベルに回復し、ET投与群のみで有意な減少が継続した。CCl4およびETともに肝脂肪変性を引き起こすことが報告されているものの、その分子メカニズムや肝臓に与える毒性影響には時間的なものを含めて差がある可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、初年度に四塩化炭素(CCl4)の動物実験、2年目にエチオニン(ET)の動物実験を行う予定だったが、初年度に2物質の動物実験を併行して実施することで媒体対照群の動物数を削減するとともに、実験スケジュールを前倒しして研究を進めることができた。一方で、初年度に着手する予定であったCCl4投与群のオミクス解析を2年目に実施することにした。そのため、全体的な進捗状況としてはプラスマイナスとなり、概ね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、CCl4およびET投与後の肝臓サンプルの経時的なオミクス解析を行い、肝脂肪変性を引き起こす分子メカニズムを明らかにし、動物実験でみられた種々の毒性症状との関連性を解明する。 具体的には、まず網羅的な遺伝子発現量解析によって肝脂肪変性に関与する遺伝子群とそれら遺伝子間の関係性を明らかにし、肝脂肪変性の細胞内イベントにかかわる重要因子を絞り込む。遺伝子発現データはGSEA(Gene Set Enrichment Analysis)などを活用することで、個々の遺伝子IDレベルで物質間のメカニズム比較を行うのではなく、機能単位、イベント単位で解析する。さらに、経時的データも加えて、AOP(Adverse Outcome Pathway)概念に沿ってシーケンシャルな毒性パスウェイとして情報を整理する。 次に、重要因子の細胞内局在や機能的変化を免疫組織学的に観察する。遺伝子発現、タンパク質発現/局在/翻訳後、細胞、組織の各階層のデータを統合的に解析する。最後に、タンパク質の機能的変化や細胞内局在、組織学的変化のデータを統合し、シーケンシャルな毒性メカニズムの解明を目指す。
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Causes of Carryover |
研究計画を若干変更して初年度に2物質分の動物実験をまとめて行う代わりに、オミクス解析を次年度に実施することとしたため、消耗品費に差額が生じ、その分が次年度に繰り越しとなった。
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