2021 Fiscal Year Research-status Report
Exploring dynamic pictures of supermassive black holes with movie reconstruction from event-horizion-scale observations
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19KK0081
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Research Institution | National Astronomical Observatory of Japan |
Principal Investigator |
本間 希樹 国立天文台, 水沢VLBI観測所, 教授 (20332166)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
笹田 真人 広島大学, 宇宙科学センター, 特任助教 (10725352)
池田 思朗 統計数理研究所, 数理・推論研究系, 教授 (30336101)
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Project Period (FY) |
2019-10-07 – 2025-03-31
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Keywords | 巨大ブラックホール / 超長電波基線電波干渉計 / 動画解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度はEHTの観測のうち、天の川銀河中心の巨大ブラックホールであるいて座A*の解析について集中的に行った。観測データとしては、6か所8台の電波望遠鏡群によって行われた2017年のものを使用し、空間周波数サンプリングの最も良い時間帯での動画化の可能性を検討した。しかし、現在の空間周波数サンプリングでは、動画化の際に与える初期平均画像イメージへの結果の依存性が高く、2017年の観測からブラックホール周辺のガスの動きについて確実な結果を得ることは難しいことが判明した。そのため、これに代わる方法として、まずガスの動きなど天体の変動効果を"ノイズ"として捕え、それによって時間平均された画像を抽出する方法を開拓した。そのような手法に基づき、いて座A*の時間変動について定量化すること、また時間平均画像の基本構造を追い込むことに成功した。この成果は、今後同天体の動画解析を進める上で、重要な出発点となることが期待できる。 一方、さらに良質な空間周波数のサンプリングを持つデータを取得すべく、2021年春にもEHTの観測を行い、M87やいてA*の追加データを取得している。この観測では、2017年に比べて新たな望遠鏡が3台増え、9カ所11台の電波望遠鏡群からなる観測網を用いてデータが得られている。3台の望遠鏡の追加によって空間周波数のサンプル数は(11x10)/(8x7)=1.96倍に増強されるので、今回の観測データは動画化の実現に向けて重要なものになると期待される。また、これに合わせて、東アジアVLBI観測網(EAVN)でも多波長でのフォローアップ観測が実施され、時間変動解析のための参照データが取得されている。さらに、これまでのEAVN観測での時間変動解析が進み、M87のジェット軸の歳差運動のような動きが検出されるなど、ブラックホールおよびジェットの理解の鍵となる観測結果が得られている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本件研究で当初立てた3つの課題は、1)動画観測に向けた観測の実施、2)動画解析手法の開発、3)科学的成果の集約であり、それぞれ十分なレベルでの進捗があった。1)については、2021年に9カ所11台の電波望遠鏡からなる拡充されたEHT観測を実現し、いて座A*およびM87の良質なデータを取得できている。2)については、いて座A*の2017年の観測結果の解析を進め、動画化をする上での現在の限界と今後の課題について明確にすることができ、動画化の重要な一歩となる時間平均画像を得る方法をほぼ確立できた。また、3)科学的成果の集約については、EHTのいて座A*の論文化を進めており、2022年度に成果を論文として出版する目途がたった。以上の3課題の進捗状況から現在の進捗状況は「(2)おおむね順調に進展している」に相当すると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度中に、これまで解析を進めてきたいて座A*の成果を論文としてまとめ、成果を公表する。また、そこで得られると期待される時間平均画像を用いて、より拡充された2018年以降のEHT観測データを解析し、動画化の可能性を探る。また、M87など、動きの遅い天体についてはこれまで蓄積されたデータを用いて時間変動について研究を進め、ブラックホール分野で引き続きすぐれた成果を挙げることを目指す。また、動画化に必要となるデータの蓄積のため、新たなEHT観測やEAVN観測も実施する。
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Causes of Carryover |
新型コロナ感染症の世界的な流行を受けて、観測運用をリモート制御で対処したり、海外研究会の出張を先延ばしたりしたために次年度使用額が生じている。2022年度以降、感染症による渡航制限が緩和されて海外出張が可能になると想定されており、これまで先延ばししていた出張を実施する予定である。2022年は前年の未使用額と新年度の経費を合わせて、スペインで開催予定のブラックホール研究に関する国際会議の参加や、米国の共同研究機関への若手研究者派遣、観測オペレーションの参加および解析に必要なHDDの購入などを予定している。
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Research Products
(11 results)